決算発表から見た日本経済、低迷続く日本と欧米、存在感を増す中国とインド
2008年9月に発生したリーマンショックは、世界的な信用収縮をもたらし、消費や設備投資、住宅投資の急減を招いた。特に住宅、自動車など消費者が購入する際にローンが不可欠な高額な財ほど需要の落ち込みが大きい。その影響は輸出に依存する日本企業を直撃した。日本を代表する優良企業トヨタ自動車が09年3月期に大幅な営業赤字に転落、大きな衝撃を与えた。
大減産から脱出したが…
09年1~3月期は日本経済史に残る減産が行われた。自動車の生産台数がリーマンショック前の半分程度になったが、それに関連する部品・素材では3分の1になったところも珍しくない。自動車、電機などの完成品メーカーは膨れ上がった在庫整理に奔走したうえ、部品や素材の適正在庫水準も引き下げたからだ。
この結果、通常なら赤字にならないはずの部品・素材企業までが赤字に陥った。金属加工油剤で国内首位のユシロ化学工業。かつては営業利益率10%、盤石な財務内容を誇り、一時は有名な「ハゲタカファンド」スティール・パートナーズに株を買い占められた企業である。そのユシロ化学が09年3月期下期は4・5億円の営業赤字に転落した。「自動車メーカーは金属加工油剤の在庫水準まで減らしている」(ユシロ化学の財務担当者)という状況だった。
半導体、電子部品用のメッキ薬品で市場占有率20%を誇る上村工業。特にHDD製造用では世界の市場占有率は30%。リーマンショック前の08年3月は営業利益率13%という高収益の企業である。その上村工業の「09年1~2月は月次決算で赤字になった。ありえないことが起こった」(同社役員)。
自動車や電機の減産は消費財メーカーも直撃した。多くのコカ・コーラボトラーは、工場や事務所など職域に設置している自動販売機による飲料の販売数量が09年1~3月期は前年同期比30%も減った、という。