コロナで導入「在宅勤務」をうまくまわすコツ 従業員のパフォーマンスを下げないためには

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管理職の負担も看過できない。自分の部下の業務が予定どおり進捗しているのか、日々しっかり成果を出しているのかをリモートで管理することは容易ではない。物理的に同じ場所にいないことで、タイムリーなサポートが難しくなるケースも発生する。そもそも上司と部下の間に、しっかりとした信頼関係がなければ、成り立たない勤務形態といえる。

それでも、在宅での就労環境に皆が慣れてくれば、必ずしも同じ場所に集まって仕事をする必要はないとする従業員の声も聞かれる。まさに2020年は、将来的に在宅勤務やテレワークが定着するかの試金石的な年になると考えられる。

在宅勤務と従業員のエンゲージメント

従業員のパフォーマンスを下げないということは、すなわち従業員エンゲージメントを下げないということを意味する。従業員エンゲージメントとは、会社の戦略・方針に共感し、自社に対する誇りを持って、自発的に仕事に取り組む従業員の姿勢を指す。つまり、どこで働くことになっても、エンゲージメントの高い社員は自発的に高いパフォーマンスを発揮するからである。

では、在宅勤務が一定期間継続することによって、従業員エンゲージメントはどのような影響を受けるだろうか。

エンゲージメントに影響を与える要因は、個別の企業の事業の特性や従業員の属性、経営環境などによって異なるが、一般には、全社戦略・方針の浸透、コミュニケーション、個人の尊重、顧客志向、成長の機会、業務遂行上必要なリソース、権限・裁量、業績評価・報酬などが、主要な要因となることが多い。

これらの要因に対して、在宅勤務の推進は、全体としてはマイナスの影響を与える可能性がある。とくに、日常業務におけるコミュニケーションやチームとしての協力体制がうまく機能するかは、エンゲージメントの水準を大きく左右する。それを支えるのが、IT技術による音声・画像を含むコミュニケーション(ビデオ会議システム)や、従業員の声をタイムリーに収集するサーベイの仕組みなどである。

このほかの要因に対しても、従業員が在宅勤務を通してネガティブな体験を重ねるのであれば、エンゲージメントが低下してしまい、最終的にはパフォーマンスも落ちることが想定される。逆に、在宅勤務中であっても十分なコミュニケーションが維持され、社内の協力が実現されるのであれば、エンゲージメントの低下の危険性はある程度回避できるということだ。

それでは、従業員エンゲージメントを維持するために、企業は何を注意すべきか。平常時ではなく、新型コロナウイルスの感染拡大という非常時に導入される在宅勤務であることにも留意する必要がある。

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