米中で感染拡大でも進む「在宅勤務」の存在感 日本はこれから仕事の進め方を変えるべきだ

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しかし、何よりビデオ会議、そして在宅勤務がアメリカで定着し、当たり前になった理由は、仕事の「分業化」が進んでいるからだろう。以前の記事(『アメリカに最先端人材が簡単に集まる根本理由』(2019年8月30日配信))にも書いているように、アメリカで就職する場合、ジョブディスクリプションが非常に細かく、職務がはっきりしている。

それにより、チームワークにおいて役割分担が明快であり、ネットでの連絡ができれば、対面でなくても業務に支障を来さずにこなせるのだ。

サンフランシスコで勤務する知り合いの女性は、「顧客との面談または出席必須のグループ会議などの時間以外は、在宅勤務が認められる。自宅以外のところに行きたい場合、上司と業務内容を確認し、期限内に完成できるのであれば自由に行ける」と言う。同僚との仲がますます疎遠になるという心配もあるだろうが、通常だと会社のハッピーアワーやソーシャルイベントが多いので安心できるようだ。

日本の場合、遠くても飛行機1時間程度で着くし、対面のほうが丁寧だと思われているため、東京―大阪の距離でも日帰り出張を良しとしていた。ビデオ会議で顔出しするのを「恥ずかしい」と思ったり、机回りや背景など映す必要がないものを映さないこと(Zoom等はそれを配慮)や、回線に負担を与えたくない気持ちもある。そして、在宅勤務より会社に行くほうが「働きぶりを上司に適切に評価してもらえる」と思う人は多いだろう。

日本は働き方の改革が遅れている

また、日本官公庁や大企業の仕事の進め方として、責任者から遂行者まで同じ島で作業する「大部屋主義」という形態も特徴であると指摘されている。業務の進め方はチームワークが重視され、上司からの指示も「何をすればよいのか曖昧なところが比較的多くわかりにくく」「ホウレンソウ」主義で逐次直接上司に相談するのが当たり前である。

アメリカのような明確なジョブディスクリプションのもとでの単独での職務遂行、文書やビデオ経由の交流にはなじみがない。

国境と文化の違いによってテレワークの推進にはハードルが高いが、より柔軟な働き方を進めるには、ビデオ会議ないし在宅勤務はごく普通の仕事の1つの形であると認識するたけでなく、仕事のやり方も従来の擦り合せ型からモジュラー型(一連の仕事をひとくくりにし、ほかの仕事との調整を極力事前に行い、自己完結度を高くし、メンバーへ割り振る方式)へ推進することも重要となってくるであろう。

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