「家は年収の5倍が目安」を真に受けるのはNGだ 今から28年前にできた理想論でしかない

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例えば、3000万円を35年返済(元利均等返済)で借りた場合の例(下図)で言えば、金利1%なら総返済額は3557万円、毎月返済額は8.5万円です。これが、金利8%となると総返済額は8949万円で毎月返済額は21.3万円ほど。借りた額の3倍弱を返済することになります。金利4%台なら借りた額の約2倍、2%台なら約1.5倍を返済するというイメージです。

8%と言われてもピンとこない

金融機関の競争によって優遇金利の拡充が進み、例えば変動金利型は基準金利(2.475%)から2%前後の優遇が受けられるようになった現在は、実効金利0.5%程度で借り入れができますね。基準金利自体が2.475%ほどの水準で四半世紀もの間ずっと続いていますので、8%と言われてもピンとこない人も多いのではないでしょうか。

しかし、私が知る時代に8%もの金利が適用された時期が確かにあり、それを受けて、東京をはじめ大都市圏においても勤労者世帯が平均年収の5倍程度を目安に良質な住宅を買えるようにする、ということを目標にして、土地対策の推進と住宅対策などの諸施策の充実を図る方針を政府が打ち出した、という経緯があるのです。

この頃と今とでは、金利水準のほかにも今と大きく違うこととして、金融機関からの融資の上限額が物件価格の8割までだったことが挙げられます。つまり、物件価格の2割相当の頭金を用意できなければ、家は買えませんでした。

そんな中で、「年収の5倍程度」で家を手にできるようにするという言葉が意味するところは、頭金(物件価格の2割)として年収相当額の貯蓄を用意できれば家を買える、というとてもわかりやすい目安だったのでした。

次ページ売主や仲介業者が「年収の5倍」を目安とする理由
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