「家は年収の5倍が目安」を真に受けるのはNGだ 今から28年前にできた理想論でしかない

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では、FPがこの目安をまったく口にしていないかというとそんなことはありません。私自身もこれまで何回か、外に対して用いたことがあります。

具体的には、購入可能額としてどうしても「年収の〇倍」という表現を使いたい編集者やセミナー開催者からの要望で盛り込まざるをえないケースにおいてです。ただし、その際にはあくまでこれは“目安”であることと、頭金2割を目標に用意してほしい旨を必ずセットでお伝えしてきたつもりです(頭金2割の説明は別の機会に譲ります)。

では、実際のFP相談の現場で「年収の5倍だから大丈夫と言われたが本当か」と聞かれた場合はどうかというと、5倍だから大丈夫という根拠のない説明をするのではなく、ライフプランシミュレーションをして将来にわたってその借り入れで大丈夫かを見て判断するようにしています。

年収負担率とは?

また、ライフプランシミュレーションをできないケースでは、「年収負担率」をもとに解説するようにしています。例えば、35歳の人が、年収負担率20%(住宅ローン返済額年額が、額面年収に占める割合が20%相当)で借りる際であれば、「5年で年収分を支払うので、25年返済では年収のおよそ5倍ですね。利息を乗せて考えて、繰り上げ返済を1回ほどすれば退職までの完済はできそうです」といった感じです。

したがって、家を買う際に用いられる「年収の5倍」という数字は、家を買って大丈夫という基準にはなりえませんが、“目安”の1つとしてはありえると考えています。しかし、鵜呑みは禁物です。

個々のご家庭で本当に買って大丈夫かどうかは、FPの視点から言えば、ライフプランシミュレーションをしてみないと判断がつかない、というのが結論です。

住宅購入は多くのご家庭で人生最大の買い物です。無料のライフプランシミュレーションソフトなどを利用して、子どもの教育費や退職年齢なども加味した複合的な判断がおすすめです。

竹下 さくら ファイナンシャルプランナー/宅地建物取引士

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たけした さくら / Sakura Takeshita

兵庫県神戸市生まれ。慶應義塾大学商学部にて保険学を専攻。損害保険会社の営業推進部および火災新種業務部、生命保険会社の引受診査部門の勤務を経てファイナンシャルプランナーとして独立。個人向けコンサルティングを主軸に講演・執筆を行う。『「奨学金」を借りる前にゼッタイ読んでおく本』(青春出版社)、『「家を買おうかな」と思ったときにまず読む本』(日本経済新聞出版社)など著書も多数。

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