アメリカ発「低格付け債」ショックがやってくる 景気後退入りで2兆ドル対策の効果も限定的

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新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、ニューヨークのタイムズスクエア周辺は人影もまばらだ(写真:ロイター/アフロ)
新型コロナショックは世界的な景気後退懸念を高め、NYダウが約3年ぶりに2万ドルを割り込むなど金融市場の大波乱が続いている。国債や金といった安全資産でさえ売られており、「現金がすべて」といった状況だ。
こうした中、アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)は実質ゼロ金利、量的緩和政策を復活させ、トランプ政権も1兆ドルを超える規模の経済対策案を検討するなど、金融・財政政策を合わせて2兆ドル近い対策を打ち出した。
欧州、アジアなど他の金融・財政当局も同様に政策を総動員し始めており、本格的なグローバル金融危機となるのかが焦点だ。
各国の対策は効果を発揮するのか。UBS証券ウェルス・マネジメント本部で日本地域CIO(最高投資責任者)兼日本経済担当チーフエコノミストを務める青木大樹氏に聞いた。
【2020年3月24日11時54分追記】青木氏の肩書きを一部修正いたします。

ハイイールド債が発する「危険信号」

――新型コロナショックが世界的な景気後退懸念と金融不安を高めています。

新規感染者数は中国、韓国で大きく減少してきたが、欧米では逆に急増し続けている。中韓から学ぶべきは「封じ込め政策」の重要性であり、欧米ともに封じ込め策を急速に厳しくしている。

ところが、封じ込め策の問題点は、とんでもなく景気を悪化させることだ。中国の2020年1~3月期の実質GDP成長率は前年同期比でマイナス5%が見込まれる。2019年まで6%程度(の成長率)だったので、劇的な落ち込みだ。

アメリカは2020年1~3月期が前期比年率でほぼ0%、4~6月期はマイナス12%成長というのが現在のわれわれの見立てだ。2020年通年ではマイナス0.9%予想だが、感染収束が7~9月期まで遅れれば、さらに悪化する。

景気悪化の中で意識されているのがクレジット(信用)リスクだ。アメリカのハイイールド債(低格付け債)のスプレッド(国債との金利差)が急拡大しており、景気後退突入の危険信号となる9%を突破する可能性が高まっている。

リーマンショック時には、ハイイールド債の平均スプレッドが10%を超えて急拡大したが、それに先行して金融機関の貸出態度が悪化した。需要急減で資金繰りに窮した企業に対して銀行が貸し渋れば、企業はデフォルト(債務不履行)するしかない。それが連鎖的なデフォルトと金融ショックにつながった。

そのため、FRBに求められるのは、金融機関が貸出態度を厳格化せず、需要急減に直面した企業に対して貸し渋りをしないようにすることだ。FRBは3月15日にゼロ金利を導入し、量的緩和政策も再開した。ただ、銀行の調達金利が0%近くに下がっても貸出態度が急に積極化するとは思えない。量的緩和は今後も拡大余地があるが、低格付け企業までお金が回るとは限らない。

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