イタリア、先進国なのに「医療崩壊」寸前な理由

普通の病院が「トリアージ」病棟になっている

イタリアの医療システムはすでに限界に近い状態にある(写真:Nadia Shira Cohen/The New York Times)

ある町の首長が嘆く。患者が非常に高齢である場合、医師たちが治療をしない選択をせざるをえないことがあり、その患者は死んでいくしかない、と。またある病院では、看護師がマスクをつけたまま机に倒れ込み、彼女の写真は疲弊した医療スタッフを象徴するものとなった。

新型コロナウイルスは、3週間も経たない間に、イタリア北部の医療システムに過剰な負荷をかけるようになった。感染者数の多いロンバルディア州の様子からは、ほかの国々にも起こりうる状況が垣間見える。それを防ぐには、各国がウイルスの感染拡大を抑え、患者数が病院の対応能力を超えないようにしなければならない。

それができなければ、世界最高の医療水準を誇る先進国の病院も、トリアージ(病状などに応じて治療の順番を決める)病棟のようになる恐れがある。つまり、普通の医師や看護師が、誰が生き延びて、誰が命を失うかに関わる重大な決断を下さなければならなくなるということだ。経済力豊かな北イタリアは、すでにこの悪夢のような状況に近づきつつある。

外出禁止令も遅きに失したか

イタリアは3月の第2週に、極めて厳しい手段を講じた。人の移動を制限し、薬局や食料品店などの不可欠なサービスを除いて、店舗をすべて閉鎖したのだ。しかし、それらの措置も患者数の急増を防ぐのには間に合わず、評価の高い医療システムにも大きな負担が生じている。

イタリアの状況が示すのは、患者数が危機的な水準に達するかなり前から、断固とした、素早い行動を起こすことが重要だということだ。そうしなければ、患者数が医療システムの限界を超えるのを防げないかもしれない。

イタリアはすでにその限界を超えてしまったように思われる。医師らが置かれている状況は、第2次世界大戦以降、ヨーロッパの先進国ではほぼ見られなかったような異常な状況だ。

次ページ手術がキャンセルされ、人工呼吸器も不足
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
  • コロナショックの大波紋
  • Amazon週間ビジネス・経済書ランキング
  • 西村直人の乗り物見聞録
  • 財新
トレンドライブラリーAD
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
小学校<br>子どもが幸せになる選び方

新型コロナ対策に追われる小学校で、4月から学習指導要領が変わりました。プログラミング教育、英語の必修化、アクティブ・ラーニングなど、新しい学びの体系の中で学校の違いがさらに鮮明になります。子どもが幸せになる学校を徹底分析しました。