イタリア、先進国なのに「医療崩壊」寸前な理由 普通の病院が「トリアージ」病棟になっている

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

また、「最大限の人に最大限の効果をもたらすために」、集中治療室の利用には制限を設けることができるとも記されている。その目的は、希少な医療資源を確保しておき、「第一に生存の可能性がより高い人、第二に、今後生存する年数がより長いと考えられる人」に振り向けるためだ。「誰も追い出されることはないが、優先順位の基準を示した」とペトリーニは言う。

ロンバルディア州で緊急事態への対応を率いるジュリオ・ガレラは、このガイドラインを適用する必要が決して生じないことを願うと話した。

ガレラはまた、ロンバルディア州ではイタリアの市民保護機関とともに、展示会の中止のため利用されていない展示会場を、500床の集中治療病棟に転用することを検討していると話した。ロンバルディア州には医師と人工呼吸器も必要だ、とガレラは言う。

イタリア南部での対応はさらに困難

ミラノのサッコ大学病院で感染症部門のディレクターを務めるマッシモ・ガリは、「この病気の流行によって、病院は第2次世界大戦以降では前例のないストレスを受けている」と言う。同病院では、新型コロナウイルスの患者を多数受け入れている。「もし、このまま潮が満ちていくのなら、それに持ちこたえようとダムをつくっていくのは、どんどん難しくなっていく」とガリは言う。

政府は緊急措置で医師や医療スタッフの雇用を増やそうと、医科大学の最終学年の医学実習生を含め、数千人を雇うことを検討した。しかし、ガリによると新人の医師を訓練するのには時間がかかるという。他部門の医師を異動させても、感染症治療の経験がなければ、やはり対応までには時間がかかる。また、医師らは感染の危険にもさらされる。

多くの専門家が指摘するのは、経済的に豊かで文化水準も高い北部の医療システムが持ちこたえられないのであれば、貧しい南部が対処できる可能性は非常に低いということだ。

イタリアの公立病院の医師でつくる協会の代表を務めるカルロ・パレルモは、もし、南部にもこれまでと同じ速さでウイルスが広がったら、「医療システムは持たないだろうし、治療の提供は保障できないだろう」と言う。

(執筆:Jason Horowitz記者、翻訳:東方雅美)
© 2020 The New York Times Company

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事