40歳、元阪神投手の会計士が後輩に伝える知見 現役時代から社会に出る能力の養成が必要だ

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「まぁでも、今考えると言い訳ですよね。仕事に打ち込む!っていうのは、勉強しないためのいい口実になるじゃないですか。あれは、うまいこと逃げてましたね、現実から」

会計士の試験は、1次試験を一度パスすると、1次試験を受けなくても2次試験を3度まで受けることができる。この3度のチャンスで合格できないことを、その道の人たちの間では、「三振」と呼ぶそうだ。会計士を目指して7年目の冬、奥村はついに初三振を喫する。

「三振した日の夜、予備校生たちの”合格“祝勝会が行われたんです。僕、仕事でその会の企画と運営をやってたんですね。三振して途方に暮れている中、祝勝会を進めてました。そのとき、自然と涙があふれてきたんです。もう、道を変えようかなって」

当時の職も板につき、会計の知識も十分についた。社会に出るには申し分ない。その時、道を変えることに待ったをかけたのは、妻だった。

「逃げちゃダメだって。ここで逃げたら、あなたは大事なところで必ず逃げる人間になる。絶対に逃げちゃダメだって言われました。これで、ようやく覚悟が決まりました」

覚悟を決め、言い訳を排除すると決めてから、生活は完全に受験勉強中心に切り替わった。

そして、勉強に真剣に向き合うようになって初めて、さまざまなことが見えてくるようになった。

「試験と野球の思考パターンはまったく同じ。そう考えると急に勉強が楽しく感じられ、どんどんのめり込んでいきました」(撮影:梅谷秀司)

「試験での多くのミスは、ケアレスミス。要するに、自滅です。これ、野球と同じなんですね。フォアボールやエラーをしちゃうから、失点する。いかにミスを減らしていくかと考えると、思考パターンは野球とまったく同じなんです。そう考えると、急に勉強が楽しく感じられて、野球をやっていたときの、できないことができるようになる感覚に近い感覚を得ました。楽しいと、自ら工夫をするようになります。そうやって、どんどん勉強にのめり込んでいきました」

「資格ガイド」を渡されてから9年。ついに、会計士の資格を獲得した。

セカンドキャリアの鍵は、現役時代にある

「受験勉強のときのあのマインド、あれがプロ野球のときにできたら、もっと活躍したんじゃないかと思います。目標を決めて、課題を見つけて、1つひとつ解決し、目標との距離をつねに測る。その考え方は、今の仕事においても土台になっています。だから、現役のときになんとなく一生懸命練習するんじゃなくて、つねに考えて練習するという思考のクセが、引退後にも生きてくると考えています」

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