経営者や人事・労務部門は、なぜ過剰に対応するのでしょうか。今回、大手企業の人事・労務部門に所属する管理職8名にヒアリングをしました。
まず、「対応で最重要視していること」については、8名全員が「従業員の健康・安全の確保」と回答しました。次に「対応は過剰か、適切か」という問いに対しては以下のとおりでした。
「過剰だが、こういう状況では適切」(5名)
「過剰で、不適切。早く正常化したい」(1名)
そして、匿名を条件に、以下の本音のコメントがありました。
「非常事態とはいえ、従業員にはかなり無理なお願いをしており、心苦しい」(4名)
「こういう場面では、何かあったときに人事部が悪者にされないよう、過剰に対応するのが鉄則」(3名)
「かなり馬鹿馬鹿しいことをしているが、こういうときは対経営者、対社外に “やってます”アピールをするしかない」(2名)
つまり、人事・労務部門は、経営陣への忖度(そんたく)、責任回避、対外的なメンツなどから、意味がないと自覚しつつ過剰な対応を従業員に押し付けている可能性があります。
従業員に無理を強いる緊急避難措置を長期間に渡って続けるのは困難です。あまり効果のない過剰な対応は、見直したほうがいいのではないでしょうか?
過剰対応ではないという反論
企業の関係者に「過剰な対応を見直したほうがいい」と話すと、多くの場合「そのとおり!」とひざを打っていただける一方、次のような反論をいただくこともあります。
「新型コロナウイルスの脅威を甘く見るべきではない。過剰なくらいの対応でちょうどよい」
「今回の新型コロナウイルスの治療薬・治療法がまだ見つかっていない」
甘く見ているかどうかは印象の問題ですが、事実を指摘しておくと、新型コロナウイルスの感染者数804名(3月15日現在)は、日本の人口の0.0006%。死亡者数24名は、インフルエンザによる死亡者年間約1万人や肺炎による死亡者約9万人よりかなり小さい数字です。
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