茂木健一郎「よく怒る人ほど仕事ができない訳」 怒りとは「脳がまったく集中していない」状態

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怒ってしまうと、自分自身をコントロールできなくなります。それが、「怒らないほうがいい」という最大の理由です。

そんな怒りに満ちた人に遭遇してしまったとき、どうすればいいでしょうか。真っ先にしなければならないのは、自分が怒りに染まらないこと。相手が怒ったとしても、あなた自身は決してキレたりイライラしたりしてはなりません。

例えば相手が怒っているときに、こちらがニコッと笑うだけでも状況は変わります。

「相手が怒っているときに笑顔になるなんてできないよ」

そんなふうに思う人もいそうですが、やればできます。それには脳の使い方を変えればいいのです。

脳には、目で見た人の動きを無意識にマネしてしまう「ミラーシステム」という働きがあります。

例えば、向かいに座っている人がカップを持ってコーヒーを飲んだら、自分もカップを持ってしまう……。まるで鏡でも見ているかのような反応をするので、「ミラーシステム」と名付けられています。

この「ミラーシステム」をうまく活用すると、怒りを抑えられるようになります。相手が怒っているときに、こちらがニコッとすれば、「なぜこの人は笑っているのか?」と、とまどいます。

相手が怒っているときに、ニコニコしていると、今度は向こうの脳にミラーシステムが作用するようになります。そう、こちらと同じように、相手もニッコリしてきます。気がつけば、鬼のような相手の顔も、笑顔になっているではありませんか。

怒りのピークは10秒程度

あるいは相手の話をじっくり聞くのもいいでしょう。怒りのピーク時間はせいぜい10秒程度。

あなたがスーパーやコンビニの店員なら「申し訳ございません」と平身低頭した後に、「私どもの至らない点をお聞かせください」と、お客の話をじっくり聞くようにすれば、怒り疲れした相手は冷静になるものです。「別に怒るほどのことでもなかった」と、かえって恐縮するかもしれません。

『もうイライラしない! 怒らない脳』(徳間書店)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

怒りにうまく対処するには、それ相応の脳の使い方があります。それは、ミラーシステムをうまく活用して、相手の脳を「怒らない脳」に変える。そうすることで、相手の怒りをコントロールできるようになります。

もっとも、その前に、あなたの脳が怒らない脳になっていなければなりません。それは、誰かの理不尽な怒りに対処するだけでなく、パフォーマンスを上げるためにも必要なことです。怒らない脳になれば、仕事や勉強でも成果を出せるようになります。

怒らない脳に変えるのは、転ばぬ先のつえ。怒らないということは、不寛容化する21世紀日本において必要なスキルです。

茂木 健一郎 脳科学者

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もぎ けんいちろう / Kenichiro Mogi

1962年東京生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、同大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て現職。「クオリア」(感覚の持つ質感)をキーワードとして脳と心の関係を研究するとともに、文藝評論、美術評論などにも取り組む。2006年1月~2010年3月、NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」キャスター。『脳と仮想』(小林秀雄賞)、『今、ここからすべての場所へ』(桑原武夫学芸賞)、『脳とクオリア』など著書多数。

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