「キリンは株主無視だ」英投資ファンドの言い分 トップが語る日本企業のガバナンス不全

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縮小

――キリンはビール市場の縮小を受け、成長市場である医薬事業への多角化を図っています。

率直に言ってこれは本当にばかげた考え方だ。キリンの経営陣は自分たちの戦略を貫くために、間違った視点を強調している。

キリンの経営陣はKV2027という戦略、医と食をつなぐという戦略が株主価値を創出すると訴えている。だが、これは例えるなら、「地球が平らだ」と主張するのと同じことだ。世界中を見ても、コングロマリット(複合企業)は資本配分の仕方が極めて非効率だ。全体の企業価値をむしろ下げている。キリンの戦略は決して株主価値を上げるものでなく、むしろ痛手を与えるものだ。

国内ビール事業は「お先真っ暗」ではない

――ビール市場は縮小しています。ビール事業への集中は、長期的成長につながらないのではないでしょうか。

これもやはり磯崎社長が意図的に株主に対して誤解を抱かせるような発言をしている。

キリンのビール事業を見ると、その事業利益の半分が国内、半分がオーストラリアやミャンマーなどの海外事業だ。日本国内は高齢化が進んでビールの販売量が落ちこみ、市場が縮小するとしている。確かに数量ベースでは伸びてはない。

だが、キリンが見込むのは今後7年間で毎年0.4%ずつ減少するという予想だ。わずかに0.4%。これは大きな数字ではない。過去5年間もほぼ同じように推移しており、この環境下でキリンは利益を伸ばすことを実証している。

今後も、値上げや割引率の引き下げなどによって成長は可能だ。高価格帯のクラフトビールや輸入ビールを商品構成に加えることによって成長を維持できる。これらを踏まえると、(キリンの主張する)「ビールはお先真っ暗」という結論にはならないはずだ。

しかも、これは国内の話で、残り半分はオーストラリアやフィリピン、ミャンマーといった、若年層が多い成長市場だ。ビールの出荷数も長期的に増大が期待でき、高収益化が進んでいる。つまり、国内外の両方でキリンのビール事業は自然に成長でき、収益率もさらに向上していくことが見込める。

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