「キリンは株主無視だ」英投資ファンドの言い分 トップが語る日本企業のガバナンス不全

拡大
縮小

――2人の社外取締役を推薦していますが、その狙いは?

われわれが目指すのは、独立社外取締役を送りこむことによって、独立した立場から長期戦略の検証を行ってもらうことだ。独立した取締役が十分に配慮し、経営陣に対て批評的な質問をすることが必要だ。全く見当違いの戦略が推進されているが、それを徹底的に検証すべきだ。

――取締役会の12人中(3月27日の株主総会で、現状の9人から12人への拡大を決議する予定)、2人の社外取締役を入れたところで大きな発言力にはならないのではないでしょうか。

求めるのは2人の独立取締役の選任だけではない。経営陣に株価の重要性を認識させるため、役員報酬制度を変える必要がある。業績が改善し、株価が上昇すれば、そこで役員報酬がアップするというような制度への改定を提案している。

エルマスリーCEOは「キリンのガバナンス体制は非常に弱い」と訴える(写真:梅谷秀司)

もう1つが自社株買いの提案だ。これは指図ではなく、あくまでもアドバイスとして提案する。非中核事業を売却することによって売却収入を得て、その一部で自社株買いを行い、株主にきちんと還元してほしい。

キリンの問題は基本的に3つ。非常に弱いガバナンス体制、非常にまずい戦略の策定、価値を破壊するような資本配分。これらへの解決のため、提案をしている。

株主総会後も引き続き提案していく

――3月27日の株主総会のあとは、どのような動きを予定していますか。

今一番問題なのは、あまりにも適正価値と株価がかけ離れていることだ。まずは、今の状況を解消するためにキリンが非中核事業を売却すること。その一部を使って自社株買いを実施することだ。

キリンの株価は低いので、(キリン株を)安く買うことができる。そうすることによって適正価値と、現在の株価の差を縮小できる。ビール事業に集中すれば、事業規模は小さくなるが利益を増大できる。

兵頭 輝夏 東洋経済 記者

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ひょうどう きか / Kika Hyodo

愛媛県出身。東京外国語大学で中東地域を専攻。2019年東洋経済新報社入社、飲料・食品業界を取材し「ストロング系チューハイの是非」「ビジネスと人権」などの特集を担当。現在は製薬、医療業界を取材中。

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