「キリンは株主無視だ」英投資ファンドの言い分

トップが語る日本企業のガバナンス不全

――飲酒量の多い生産年齢人口は、日本全体を上回って減少していく見込みです。海外先進国でも飲酒量が減っていく見込みです。

その通りだ。だが、われわれは先進国ではなく、ミャンマーやフィリピンなどの話をしている。これらの国は若く、人口が増えている。

キリンが喧伝している「ビールの先行きが暗い」という主張はデータの裏づけがない。人口動態学的な変化で説明しているビール会社はキリンだけだ。経営の位置づけで(キリンと)よく似ているのがアサヒだが、商業的にアサヒは非常に大きな成果を収めている。

両社の違いは何か。突きつめると、企業のガバナンスだろう。キリンはガバナンスが機能していないのではないか、という疑問につながる。ガバナンスがないからこそ、キリンはビール事業が先行き暗いというビジョンを意図的に描いているのではないか。

キリンの経営陣としては、コングロマリット帝国を打ち立てるのが優先。株主の利益は二の次であって気にしていない。こういった経営者の主張を鵜呑みにして、受け入れるべきではない。

キリンは取締役会の責任を全うしていない

――キリンのガバナンスは何が根本的に問題なのですか。

よいガバナンスの基本原則は、企業経営は企業のオーナーである株主の利益に沿う形で行われなければならないということだ。もちろん一番会社のことをわかっているのは経営陣だが、コーポレートガバナンス・コードは取締役会に対し、株主の利益を守り、企業の経営のあり方をきちんと監督していく責任を求めている。

キリンが取締役会の責任をきちんと全うしていない1つの証拠がある。キリンは協和キリンの株を53%保有するが、2019年2月に協和キリンの一事業部門である協和発酵バイオを子会社化した。キリンは主導権を持つためだけに、約1300億円を投資した。だが、この買収には経済合理性が一切ない。共同開発された製品もないし、販売経路のシナジー、顧客にもほぼ共通性がない。(記者注:キリンと協和発酵バイオとの間では、共同開発製品がある)

これだけ巨額の投資を実行するときは、取締役会にかけられ、期待投資利益率を予想することは当然のことだ。だが、このような検証作業がキリンの取締役会で行われた証拠はない。さらに2019年9月に協和発酵バイオで品質管理上の問題が起き、製品が出荷できなくなって利益が大幅に減少した。

この大失態の責任を、経営者の誰も追及されていない。取締役が果たすべき本来の責任をキリンは果たしていない。

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