生徒を自殺に追いやる「スパルタ部活」の深い闇 「逃げ場のない状況」が子どもの心を摩耗する

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部活動での「厳しいシゴき」は、子どもたちに本当に必要なことなのでしょうか?(m.Taira/PIXTA)
今も「根性論」や「はげしいシゴき」が蔓延する日本の部活動の問題点とは? 日独ハーフのコラムニスト、サンドラ・へフェリン氏の新刊『体育会系~日本を蝕む病~』から一部抜粋・再構成してお届けする。

理不尽なルールを強いる「部則」など、ニッポンの部活にも問題点は多いです。ただし、優れた指導者に巡り合う可能性があるのもまた事実です。近年の成功例はなんといっても八村塁選手でしょう。21歳でNBAに選ばれ年棒4億円と報じられたことは皆さんの記憶に新しいかと思いますが、彼のバスケットボール人生のスタート、それはニッポンの部活でした。

もともと小学校時代は野球に打ち込んでいた八村選手ですが、投げる球が速すぎる&重すぎるということで、周りの児童から「痛くて受け取れない」と言われてしまい、才能があったにもかかわらず「キャッチャー」のポジションにされてしまいます。

その後、肩を痛めたこともあり、野球は続けず、中学校へ上がってからはどの部活にも入っていなかったそう。そこに目をつけたのがバスケット部の坂本穣治コーチで、人を介して八村選手にバスケット部を見学に来るように何度も誘ったのだとか。八村選手は度重なる勧誘に負けバスケット部に入るのですが、バスケットを始めたのは中1になってからですから、運動神経はよかったもののバスケで芽が出るまでには時間がかかりました。

八村塁を支えた坂本コーチ

この坂本コーチは最初から八村選手に対し、「君は将来NBAの選手になる」と言い続けていたそうです。練習を懸命にする八村選手の心が折れそうになると決まって、「君は将来NBAの選手になる」と声をかけました。また、「マイケル・ジョーダンそっくりだ」とも。

八村選手のNBA入りが決まった際、坂本コーチが「最初は本気で『NBA』と言っていたわけではなかったが、彼が真剣に目指すのを見るうちに、いつの間にか私の夢にもなっていた」と語っていたのは印象的でした。

また、「私としては指導力のなさを埋めるためにNBAという言葉を利用させてもらった感じがある。NBAに申し訳ないですね。夢を描けと指導してきたが、現実になるなんて。夢を持つことの大切さを改めて感じました。八村との出会いは偶然だけど、彼が成長したのは必然。こんなことってあるんですね」と語り目頭を押さえました。

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