新型コロナの「経済対策」はどうあるべきか 高齢者への給付や追加公共事業が感染を助長

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経済的打撃を受けた人を助ける経済対策として代表的なものは、休業を余儀なくされたり、仕事がキャンセルされたりして、所得が減った就業者への給付と、経営難に陥った企業への資金繰り支援である。

そのための財源はある。まずは、新型コロナウイルスの感染拡大防止のために自粛した企画関連予算である。政府は広報活動や啓発活動用の予算や国内外の出張費を計上している。これらのうち、自粛のために使わなくなった予算がある。それらを他の用途に使うには、補正予算を組む必要がある。

所得が減った就業者への給付も、手続きを簡素にすべきだろう。本来、そうした給付手続きを簡素化する政策インフラが整っていればよかったが、あいにく現時点では存在しない。役所が所定の書類を作り、場合によっては対象者が役所の窓口に行かなければならない。そこで、対象者と窓口の担当者が濃厚接触となる危険性もある。

感染拡大防止こそが最も効果的

それを避けて、簡素に給付手続きができる政策インフラで現時点で構想があるものは、「マイナンバー「25%還元」は大化けするか」で取り上げたマイナポイントである。マイナポイントとは、マイナンバーカードにひもづけられたポイント制度である。事前登録などによって、自分がよく使う電子マネーやQRコードなどのキャッシュレス決済に使うことができる。

マイナポイントを使えば、窓口に行かなくても給付が受けられる。マイナンバーカードを持っている人は少ないが、スマホやパソコンからでも交付申請ができる。

一方、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で経営難になった企業には、資金繰り支援が効果的だろう。ただ、関東大震災後の震災手形で、不良債権になったものも紛れ込ませて手形を振り出した鈴木商店のようなことにならないようにすることが必要だ。

最も悩ましいのは、観光業と運輸業である。感染拡大防止のために、渡航や出張を制限・自粛している。それが解かれない限り、いくら財政出動したとしても、本来の業務を営むことは難しい。同様に、多くの人が渡航したり出張したりすることを前提とするビジネスも、感染拡大が止まるまでは厳しい。

今回の感染拡大に対する経済対策は、過去の経済対策と同じではいけない部分がある。感染拡大を助長する財政出動ではなく、感染拡大防止こそがいま最も効果的な経済対策である。

土居 丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授

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どい・たけろう / Takero Doi

1970年生。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、慶應義塾大学助教授等を経て、2009年4月から現職。行政改革推進会議議員、税制調査会委員、財政制度等審議会委員、国税審議会委員、東京都税制調査会委員等を務める。主著に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社。日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、『入門財政学』(日本評論社)、『入門公共経済学(第2版)』(日本評論社)等。

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