定年後の職場で「浮く人」は弱さを見せていない 「効率性と生産性」よりも「無駄と寄り道」が必須

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「再雇用」であったとしてもそれは「転職」と同じことです(写真:mits/PIXTA)

3月14日に配信した「64歳元常務が「再就職先」で味わった哀れな末路」では、定年後の再就職に失敗した元常務の体験談などから、長年1つの会社で塩漬けされた思考回路がそう簡単には抜けないことを指摘した。ここからは「なぜ、塩抜きが難しいのか?」という根本的な話をする。それは一言で言うと「再就職=転職」という認識の乏しさだ。

“再就職”という言葉が象徴するように、定年後、あるいは定年前に途中下車した人たちの転職は「今の延長線上にある」と考えがちだ。大切なことなので、繰り返すが「再就職(再雇用)とは転職」である。定年後雇用延長も厳密には「社内転職」だ。どんなに培ってきたキャリアだろうと、どんなに高い役職に就いた経験があろうとも、まずは組織の一員になることを最優先する。それは組織内における自分の居場所を確立するために必要なプロセスである「組織社会化」を成功させることだ。

組織社会化は一般的には新卒社会人に用いられる理論だが、実際には昇進や異動のたびに、改めての組織社会化=再社会化が必要になる。とくに再就職でのそれは極めて重要だ。

組織社会化では、

・自らに課された仕事を遂行する
・良好な人間関係を築く
・組織文化、組織風土、組織の規範を受け入れる
・組織の一員としてふさわしい属性を身に付ける

の4点が課題となる。

新卒の場合にはこれらを包括的に獲得していくことが求められるが、熟練したキャリアでの再社会化は「良好な人間関係の構築」が最優先課題になる。新しい職場で一刻も早く自分の存在価値を知らしめたい気持ちはわかるが、どんな能力があろうとも周囲といい関係がない限り、その能力が生かされることはない。

シニア vs. シニアの仁義なき戦い

一方、新規加入する“偉い人”を受け入れるメンバーたちは、

「自分たちを大切に扱ってくれるだろうか?」

「自分たちにどんな利益をもたらすのだろうか?」

「本当に信頼に値する人物なのだろうか?」

と不安を感じているので、新参者の一挙手一投足に注目する。

その中には同年代の“先輩社員”もいて、彼らの警戒心は半端なく高い。

「シニアがシニアを教育するのは、とても難しい」と、再雇用組の教育係の人が嘆いていたことがある。ベテランシニアは新米シニアに「見下されないようにしなきゃ」と警戒するのだという。「年を取っていると思われたくない」「大したことないとなめられたくない」と恐れるあまり、自分がバカにされないように相手をバカにする。シニア vs. シニア。まさにプライドの戦いである。

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