――クルマ好きの中には、「一度でいいからニュルブルクリンクを走りたい」と思う人もいますが、どう思いますか?
最初は「すごかった」、「楽しかった」かもしれませんが、走れば走るほど怖さが見えてくると思います。
最低で馬力分。100馬力のクルマなら100周、LFA(560馬力)は500周以上走らないと。そこからがスタートラインですね。
――ニュルブルクリンクでは後輩のドライビングトレーニングも行っていますが、成瀬さんを超える人は出てきそうですか?
どうでしょう。速さならたくさんいますが、まだ見たことはないね。スポーツの世界と同じで「オレはあいつに負けた」となったら、もうやらないでしょう。要するに、満足したら終わりです。
――成瀬さんにとってニュルブルクリンクとは何でしょうか?
人生の一部ですね。冒険家が山に登りたいのと一緒で、緑の地獄を征服したい。そこにニュルブルがある限り行くでしょうね。
料理と同じで素材の味を100%活かす
ここからは、成瀬氏が考える「新車開発について」のインタビューをお届けする。
――成瀬さんが関わってきたLFAやスープラ、MR2は制御やデバイスといった飛び道具に頼らず、“素”で勝負していますね。
クルマは料理と一緒で“素”が大事。かけうどんがうまくなければ、いくら天ぷらを載せても味はよくならないでしょ。確かに四駆や制御は使い道があるけど、素をシッカリさせたうえで使わないとダメ。それはスポーツカーだけでなく、ワンボックスも同じ。
――では、理想のクルマの「味」はどのような物だと考えていますか?
「トヨタの味は?」、「成瀬さんの味は?」と聞かれることが多いですが、実は決まった味はありません。LFAはLFA、スープラはスープラ、ワンボックスはワンボックスと、すべては材料で決まってしまう。
――つまり、明確な基準はないわけですね?
強いて言えば「材料を100%活かす」、言葉を変えると「そのクルマの理想を目指す」かな。味はすべて材料で決まる。誰もうどんを持ってきて「そばにしてくれ」と言ってもできないでしょ。
チューニングメーカーからさまざまな部品が売られていますが、そりゃ合うはずがない。彼らはうどんを無理してそばにしようとしているだけ。
――成瀬さんが責任を持って出すクルマは、「トヨタとして自信の味」だと?
そういうこと。要するにバランスが重要だと言うことです。サーキットだけ速いクルマなんて子供でもできますから(笑)。
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