豊田章男の「運転の師匠」がこだわり続けたこと 成瀬弘氏はなぜ「ニュル」を走り続けたのか

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――つまり、今も修行中だと?

ニュルブルは自分にとってもチャレンジングなコース。「もういいや……」となった時が引退する時。僕はまだニュルブルを征服できていません。だから今でも走っています。

――それほど奥が深いコースであるのですね。

深いですよ。インダストリー(メーカー占有日)は、他の自動車メーカーと一緒に走りますが、本当に僕が通用しているかどうかは一目瞭然ですしね。

――では、ニュルブルクリンクで鍛えたクルマは何が違うのでしょう?

4代目「A80型スープラ」(写真:トヨタヨーロッパ)

それは「ドライバーの安心感」でしょう。「レクサスLFAは最終的にニュルブルでつくり上げましょう」と言うことで5年くらいかけました。だから、あのようなクルマに仕上りました。

スープラ(4代目:A80型)も同じです。ニュルブルで鍛えたクルマは強いですよ。スープラが今でも高い能力を持っているのは当たり前。だから、トヨタからなかなかスープラを超えるクルマがでなくて困っていますけどね(笑)。

ニュルでは“ごまかし”が効かない

――スープラはニュルで鍛えたと聞きましたが、当時日本のサーキットでテストをすると、ライバルのほうが速かったと記憶しています。

そんなのはどうでもいいこと。ヨーロッパに来るとスープラはすごい。スピード領域が高い所に行けばいくほど良さが出てくる。日本のサーキットで勝って喜んでいるレベルじゃ、本当の味はでません。

日本のサーキットでは、クルマの性能の10あるうちの1つが見える程度ですが、ニュルは10すべてが見えてしまう。だから“ごまかし”が効かない。

――欧州の自動車メーカーはどんなモデルでもニュルブルリンクでテストを行っていますが、トヨタ/レクサスは限定的です。

それはクルマのキャラクターだったり、チーフエンジニアの考え方だったり……企業の考え方の話ですね。

もちろん、全車種やるべきですよ。クルマである以上、どんなカテゴリーのモデルでも満足して走らせる能力に差をつけてはダメ。それにレースと一緒でガンガン走るので、耐久性も上がる。

ドイツ勢はテストメニューの一環としてニュルブルを走るので、遠い島国のわれわれから見ると、非常にうらやましい環境です。

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