岩田健太郎「非科学的なコロナ対策が危ない」 クルーズ船の失敗を繰り返してはならない

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――船内のオペレーションの不備が、国内の感染症対策の課題につながる部分があると指摘されています。

それが、アメリカのCDC(米疾病対策センター)のような専門家集団の組織が日本にはないという問題だ。よく誤解されていることだが、クルーズ船の問題は現場の検疫官が防護服をきちんと身に着けていなかったというような、個々人の不手際の問題ではない。感染症対策にあたる際の日本の組織的、構造的な問題だ。

この問題はすでに2009年の新型インフルエンザのときに指摘されていた。日本にはCDCのような組織がなく、専門知識のない官僚が感染症対策を担っている。これはよくないという話は新型インフルエンザの総括会議などで指摘されていた。だが、「終わったことを蒸し返すな」みたいなことを言われていた。

日本版CDCはなぜ生まれないのか

――なぜ日本版CDCができないのでしょう。

理由はよくわからない。厚生労働省の職員も、十分な人材や専門知識がない中で対応させられ、疲弊していて気の毒だと思う。ところが彼らの論理構造は非常に複雑で、大変で疲弊していると言いながら、「じゃあほかに任せればいいじゃないか」と言うとそれは嫌がる。

クルーズ船内でも、普通のスーツを着た検疫所の職員が、(新型コロナウイルス感染の有無を調べる)PCR検査をするときの同意書を紙でまとめていた。紙ベースのものを手渡しするなんて、それだけで感染リスクが増加する。病院では、一般的な血液検査でも同意書にサインなんかしない。だから、紙じゃなくて口頭同意でいいじゃないかと思うが、検疫所は自分たちが作ったルールに縛られて、それ以上の発想ができないようだった。

感染リスクを高めてまで数千人の乗客に同意書を配って回収し、その結果、職員が疲弊する。そういった無駄なことをやめれば休憩ができるし、健全なメンタルで職員は仕事ができるはずだ。逆に無駄なことを続ければ、疲れてイライラして、悪いスパイラルになっていく。これは病院でもよくある悪いパターン。危機時にこそ必要のないものはどんどんそぎ落とし、必要なものにパワーを集中していくことが大事になる。

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