岩田健太郎「非科学的なコロナ対策が危ない」 クルーズ船の失敗を繰り返してはならない

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――専門家会議が2月24日に「この1~2週間が感染拡大のスピードを抑えられるかどうかの瀬戸際だ」と公表してから、2週間が経とうとしています。

まったくそのとおりで、今がヤマ場だ。いま全国各地で検査していても、陰性のほうが圧倒的に多い。陽性だった例も、基本的には感染者がいたライブハウスに行っていたなど、感染ルートをたどれる人が多く、リスクのある行動があった人たちの中で少しずつ感染が起きているのが現実だ。

地域のコミュニティーで感染がわあっと広がっていることはない。そういう段階であれば、感染グループを徹底的にトレースし、濃厚接触者を追跡することによって感染拡大を抑え込むチャンスが十分あるということを意味している。

新型コロナウイルスの封じ込めは今が山場だ。写真はダイヤモンド・プリンセス号(撮影:大澤誠)

それができないと武漢みたいな状況になってしまう。今がその瀬戸際だ。イタリアや韓国、イランのほうが武漢のような状況に近づきつつある。だから日本のやっている対策は、ほかの国の現状を考えるとおおむねうまくいっている。これだけ押さえ込むのが難しいウイルスをかなり上手に押さえ込んでいるというべきだ。和歌山県などは1回起きたアウトブレイクを完全に収束させた。

――感染拡大はどのくらい続いていくのでしょうか?

それを決めるのがまさに今だ。いちばん悲観的なシナリオとしては、このままどんどん感染が広がってしまって収拾がつかなくなるシナリオ。2009年の新型インフルエンザの大流行が今も続いているのと同様に、われわれはこの新型コロナウイルスと一緒に生活していく覚悟を決めなければならないかもしれない。毎年、冬になると多くの高齢者が肺炎で亡くなる病気が1つ増えてしまう。

一方、楽観的なシナリオは、3月中に収まってしまうというものだ。

科学的に正しい行動を優先させよう

――いま取り組むべきことはなんでしょうか?

科学的に正しい行動を優先させることだ。「安心するから」といった、ふわふわしたものを根拠に行動を決めないこと。どこの国でもパニックや非科学的な衝動は起きる。トイレットペーパーを買い占めてみたり、必要もないのにマスクをやたらとしてみたりとか。

政府や医師などの専門家が、一般の方々におもねって非科学的な話をするようなことは絶対にしてはならない。非科学的な行動に対して、「意味はない、間違っている」と言い続けているのが専門家集団であるアメリカのCDCだ。CDCは、症状が出ていない一般市民にマスクは不要だとはっきり言っている。科学的なエビデンスに基づいて対策を打ち出していて、そこに政治的な介入が入らないようになっている。

それに対し、一般人におもねって「マスクを増産します」という非科学的なメッセージを発信してしまうのが日本の現状だ。政府が打ち出す対策のどこが政治的な話で、どこからが科学的な話なのかがわからない。これも日本版CDCがないことの弊害だ。

安心を求めて、非科学的な議論をするのは危ない。被害は大きくなってもいいからみんなを安心させればいいというのは、病気になっても麻酔薬で痛みだけを取るのと同じ発想だ。病気はどんどん進行してしまうので、それは危うい。そういった非科学的な考え方に頼らないことが大切だ。

石阪 友貴 東洋経済 記者

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いしざか ともき / Tomoki Ishizaka

早稲田大学政治経済学部卒。2017年に東洋経済新報社入社。食品・飲料業界を担当しジャパニーズウイスキー、加熱式たばこなどを取材。2019年から製薬業界をカバーし「コロナ医療」「製薬大リストラ」「医療テックベンチャー」などの特集を担当。現在は半導体業界を取材中。バイクとボートレース 、深夜ラジオが好き。

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