――感染者が爆発的に増えると、医療機関側の受け入れ体制にも余裕がなくなってしまいます。
受け入れ体制を考えると、今の日本政府がやっていることがいちばん正しい。要は、「軽症者は家で寝ていてくれ」ということ。症状がない人や軽症の人を指定医療機関で入院させるのは、医療リソースの無駄使いだ。
ただ、武漢のデータでは、家族内感染が非常に多いことがわかっている。今は応急的に、軽症者は家で寝ていてくださいというメッセージが出ているが、家の中で二次感染が起きてくることになる。理想としては、そういう軽症患者が居住できるような「セミ(準)医療機関」(的な存在)があるといいと思う。ホテル以上、病院未満みたいなところだ。
誰でも検査できるようにすべきではない
――PCR検査が保険適応になりました。
いちばんよかったのは、保健所を介さずに検査できるようになったこと。保健所のマンパワーはぎりぎりだ。病院と検査会社の直接交渉で検査ができるようになり、保健所というプロセスを省略できたのは1つのメリット。人的リソースを大事に使うという観点からよかったと思う。
ただ、誰でも検査を受けられるようになったわけではなく、誰でも検査を受けられるようにするべきでもない。なぜなら、検査できるキャパシティーが爆発的に増えるわけではないから。検査には必ず人の労力がかかっており、限りがある。保健所というプロセスを省略しても、検査のキャパシティーが何倍に増えるわけではない。
韓国は検査で大変な状況になっている。私も2001年のニューヨークで似たような経験をした。2001年の同時多発テロの後、炭疽菌が入った封筒を送りつけるテロがあった。白い粉の中に炭疽菌が混じっていて、それを吸い込むと病気になってしまうというので、私が務めている病院に膨大な検査依頼がきた。
そうなると、天井まで積まれた膨大な検体を、検査技師2人で延々と検査していく。普段なら1~2日でできる検査が、検体数が多すぎて1~2週間かかったりする。すると、本物の炭疽菌患者が出ても、迅速に検査結果が反映できないということになる。
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