問題は、今後マーケットがさらに混乱した場合、追加策を打てるかだ。日銀が取りうる策は大きく2つ。マイナス金利の深掘りとETF買い入れ目標の増額だろう。
野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは、「3月18日、19日に開催される日本銀行の政策決定会合で追加策が導入される可能性が高まっている」と指摘。「マーケットの混乱が続けば、臨時会合で追加緩和もありうる」としている。その際日銀は「1ドル100円を意識するだろう」と言う。
日銀の一手を占ううえで、東短リサーチの加藤出社長は、「3月12日に予定されている欧州中央銀行の政策が焦点になる」と指摘する。仮に欧州中央銀行がマイナス金利をさらに引き下げるなら、金融緩和合戦の様相を呈して日銀も動かざるをえなくなる。「臨時会合をするなら、よりインパクトの強いマイナス金利の深掘りは避けられない」と予想する。
マイナス金利の拡大は金融機関に直撃
しかし、従前から指摘されているように追加緩和策は多大な副作用を伴う。中でも、マイナス金利の深掘りは金融機関の収益を一段と押しつぶす。
S&Pグローバル・レーティングの吉澤亮二シニアディレクターの試算によれば、マイナス金利がさらに0.1%引き下げられ、貸出金利もそれに伴って0.1%下落した場合、銀行の稼ぐ力を示すコア業務純益が5年後までにメガバンクで6%、地方銀行で21%下落する。
これまでの超低金利下で銀行の収益は減退しており、「2019年3月決算で、貸出金利が0.1%低かった場合、地方銀行の88%は預貸業務が赤字になる」(吉澤氏)という。足元で地銀の与信費用は増加しており、新型コロナの影響による景気悪化で倒産増加も予想される。となれば、マイナス金利による収支悪化に与信費用増加が重なって、赤字に転落する銀行が続出する可能性もある。
これが現実になれば、黒田総裁自身が指摘している「リバーサル・レート」に陥る。政策金利の下げすぎで金融機関の体力が低下し、その結果、金融仲介機能が阻害され、追加緩和の効果が失われてしまう事態だ。
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