新型コロナウイルスの急速な感染拡大により、近年、中国人消費者による「爆買い」の恩恵を受けてきた、日本の美容業界にも大きな影響が出ている。
2月初旬には各化粧品大手の決算が発表された。資生堂は2月6日に、2019年12月期決算を公表。売上高1兆1315億円(対前年比3.4%増)、営業利益は1138億円(同5.1%増)で着地した。
また資生堂は今後の見通しとして、新型コロナウイルスの影響に関しても言及した。同社は同日に行った決算説明会で、主要グローバルブランドである「SHISEIDO」「クレ・ド・ポー ボーテ」「NARS」「エリクシール」の中国での直近の売り上げの対前年比を公表した。これらのブランドは1月1日から23日まで対前年比47%増と好調に推移していたが、24日から30日の期間には同55%減と一気に数字を落とした。
新型コロナで中国での売り上げを落とす
さらに人々の動きが止まったことは免税事業であるトラベルリテールにも大打撃だ。トラベルリテール(※日本の免税店のみ)では、2020年1月1日から23日までで、前述の主要グローバルブランドは対前年比25%増と伸長した。ところが中国政府が1月27日以降、海外への団体旅行禁止措置を取ったため、この影響を受けて、1月31日から2月1日の2日間で対前年比6%減と売り上げを落としている。
他方で資生堂では2月10日から現地で営業を再開する店舗も増加している。同社の広報は「店舗は順次再開している。ただしお客さまの肌に直接触れる活動(メイクアップやスキンケア)は自粛し、そのうえで、さらに接客時に手袋、マスクを着用している」と口にする。
【2020年3月11日14時30分追記】初出時、資生堂広報の上記コメントについて事実と異なる部分がありましたので、上記のように修正しました。
また物流や生産ラインもストップしていたが、「中国国内の2つの工場も2月24日には再開しており、供給に支障はない。そのほかの新型コロナウイルスへの対応も緊急の対応を敷いており、今後の状況を慎重に見極める」と同社広報は話す。資生堂は2020年通期の見通しを新型コロナウイルスの影響を除き、売上高1兆2200億円(対前年比7.8%増)、営業利益1170億円(同2.8%増)と発表している。
衝撃的な数字が飛び出したのは、ポーラ・オルビス ホールディングスだ。同社は2月14日に2019年12月期の決算を発表。同社では昨年年初に中国で施行されたEC法(代理購入の取り締まりを強化する法律)などの影響を受け、売上高は2199億円(対前年比11.5%減)、営業利益は311億円(同21.2%減)と減収減益だった。
さらに2020年12月期通期の売上高は新型コロナウイルスの影響を加味して、連結売上高が当初想定に比べて95億円減、ポーラ単体で75億円減になる見込みであることを発表。また2020年1〜3月期(第1四半期)では当初計画比で最大70%減となる可能性があることも示唆する。同社では2020年12月期の連結売上高を2170億円(対前年比1.3%減)、営業利益を312億円(0.2%増)で計画している。
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