苛烈な円高株安の中、日銀の「次の一手」を予測

「GPIFとの共同戦線」か、2014年と環境は酷似

追い込まれた日本銀行はどう動くのか(写真:ロイター/Toru Hanai)

金融市場は引き続き荒れている。各所で「リーマンショック以来」という形容を目にするようになっているが、ドル調達が困難になったり、そもそも売買取引が成立しなかったりといった流動性の枯渇が生じているわけではない。当時を知る人間からすれば、「あの頃よりはマシ」という本音が多いだろう。

そもそも疫病に起因する資産価格の調整であり、実体経済や金融システムに瑕疵があるわけではないというのはポイントであろう。近未来の出来事として想定はできないものの「ワクチン開発の報で全戻し」というアップサイドリスクも否めない相場であることは、冷静に念頭に置きたい。

ドル主導の流れは基本的に覆せない

とはいえ、現下で生じている苛烈な円高・株安を受けて、市場では日本銀行の「次の一手」に対する期待が高まっており、実際に照会は非常に増えている。今回のコロナショックのような事態では、企業への資金繰り支援を筆頭に中央銀行よりも政府の対応に期待を寄せるのが筋である。しかし、FRB(米連邦準備制度理事会)が0.5%ポイントの緊急利下げに踏み切り、これに伴ってドル全面安(円高)が進んだせいで、これに応戦する格好での緩和措置が日銀に求められる状況になってしまった。

結論からいえば、どのような手を出そうと、日銀主導でドル安の流れを覆すことは不可能に近い。これは2009~11年の超円高局面を経験した市場参加者ならばよく分かっているはずだ。当の日銀も認識しているだろう。昨夏以降のたび重なる緩和催促をフォワードガイダンスの修正という先送り戦術で乗り切ったことがその証左である。「時間稼ぎ」で済むならば、極力目立ちたくないというのが日銀の本音であり、それがイールドカーブコントロール(YCC)の狙いでもあり、過去3年半、その目論見は実際に成功してきた。

しかし、成功してきたのはあくまでアメリカ経済が堅調だったからだ。アメリカ経済が堅調だったからこそFRBはタカ派色を維持し、ドル相場も下がらずに済んだのである。2009~11年の円高局面について白川方明・元日銀総裁の無策ぶりに原因を求めようとする向きはいまだにある。だが、変動為替相場制度で基軸通貨ドルの方向感は絶対的な影響力を持つ。

2013年4月の黒田東彦体制発足後、大幅な円安・ドル高が実現したのはFRBの正常化プロセス着手と欧州債務危機の収束という2つの追い風が重なったことが相当大きい。ドル高という方向感を基軸通貨が決めてくれたからこそ円安がかなったという事実を忘れてはならない。裏を返せば、FRBが緩和に尽くし、欧州債務危機に見舞われていたからこそ、累次の追加緩和にもかかわらず白川前体制は円高に苦しんだのである。

両体制に関し「市場との対話」の巧拙にかかわる差異があったのは確かではあるが、それは2次的要因にすぎない。重要なことは「アメリカ(=FRB=ドル)がどちらを向いているか」なのである。海外(欧米)の経済・金融環境に目を向けず、日銀の政策運営と円相場の動きだけを抜き出して語るのは本質的ではない。

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