苛烈な円高株安の中、日銀の「次の一手」を予測 「GPIFとの共同戦線」か、2014年と環境は酷似

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筆者はつねづね「もともとのドル相場の状態は高すぎるし、長すぎる」と考えてきた。2014年6月以降、足掛け6年にわたるドル高はあまりにも長く、かつ、そうしたドル相場を横目にアメリカの金利は急落してきた。この「ねじれ」が長らく放置されてきたのである。コロナショックはこの歪みを修正する契機になったのだと筆者は考える。

以上のような為替市場の実情を日銀を含めた多くの市場参加者は認識しているだろう。しかし、それでも日銀が現状維持を決め込めば、ほぼ間違いなく円高は進むはずだ。ドル安の潮流を逆転させるのは無理でも、現状を悪化させないための一手を市場は要求するものである。しかも、FRBがその地ならしをしてしまっている。

失望は不可避でも、4つの手段を検討しておく

筆者は高い確率で日銀の「次の一手」は市場から難癖に近い失望を買い、下手をすればさらなる円高を招きかねないと考えている。2009~11年はその繰り返しだったからだ。だが、現状維持はありえないであろうから、考えうるメニューについて論点整理の上、身構えておく必要がある。

第1に、マイナス金利の深掘りの可否である。筆者のところにはこの問い合わせが多く寄せられている。「利下げには利下げを」という発想は自然だが、これが相当難しい選択肢であることは周知のとおり。

すでに地方銀行を中心として金融機関の経営は未曾有の苦境にある。そうした中、当面の政府・日銀は民間銀行部門と一体となって、コロナショックで傷みつつある企業部門の資金繰りを支えていかねばならない。一致協力しようとしている仲間を背中から刺すような真似はとてもできないだろう。

何より「利下げには利下げを」という戦術は、相手と同じくらい利下げカードを持っていなければ奏功しない。FRBはまだ5回分の利下げカード(1回を0.25%ポイントとすれば)を持っている。同程度の利下げは日銀も、そしてECB(欧州中央銀行)も絶対に不可能である。対抗策を講じるのであれば、最初から利下げ以外の手段を選択しておくべきだろう。

第2に、ETF(上場投資信託)の購入枠拡大を予想する声は多い。現実的にはこれが「次の一手」の最右翼とみられる。購入枠に関しては、2016年7月にそれまでの約3兆円から約6兆円に拡大された経緯に鑑み、約9兆円に拡大されるのではないかとの期待がある。

厳密には2018年7月会合で副作用の抑制を念頭に年間約6兆円の購入枠が「市場の状況に応じて上下に変動しうる」と柔軟化されているので、この範囲内である程度の上振れを許容することはできる。現在、年初からの約2カ月半で約1.3兆円の購入をしており、現時点で残枠を心配するような状況ではない。しかし、柔軟化文言がすでに入っているのだから、使わない「見せ金」であっても、購入枠を拡げてみせて安心感を醸成するというのは悪い手ではない。

現状、株安と円高が安定した関係を持って進行していることを踏まえれば、まずは株式市場にアプローチすることが円高抑止にはなる。利下げのような効果の波及経路が怪しい政策と異なり、株を直接購入するのだから一定程度の成果は必ず期待できる。

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