向井千秋氏「日本はロケット以外で宇宙を戦え」 日本人女性初の宇宙飛行士が提言する戦略

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JAXAや食品会社などが加わるプロジェクト「Space Food X」(スペースフードエックス)のように、日本でも宇宙の食料課題を解決する取り組みを始めた。食べることの楽しさなども考えている点は日本以外では出づらいだろう。食分野では日本のオリジナリティーを出せるはずだ。

今後拡大する宇宙市場に、ロケットではなく衣食住やニッチな技術開発、パーツの分野で参入することは民間企業にとってもリスクが小さく、宇宙に進出する機会になる。

宇宙開発は地球の課題解決にもつながる

――宇宙と聞くと、遠い世界の話だと感じる人も多いです。

それは地球と宇宙が別だと思っているからだ。私は地球を「銀河の1丁目1番地」と言っている。地球も宇宙であり、私たちは宇宙の中の地球環境にいるだけだ。宇宙開発をやっていくと地球上の事業と連携してやっていけることがわかっていく。

例えば、月や火星での居住空間を考えれば、限られた物資を有効に活用することや物質循環について考える必要が出てくる。それは地球での「3R運動」(リデュース、リユース、リサイクル)にもつながる。宇宙でいかに持続可能な生活をするかを検討すれば、SDGs(持続可能な開発目標)など、地球規模で検討されている問題への答えも出てくる。

「宇宙から地球全体をみることで、普段とは違う目線で物事を捉えられる」と訴える向井氏(撮影:今井康一)

また宇宙から地球全体をみることで、普段とは違う目線で物事を捉えられるはずだ。私は女性活躍の例として講演などによく呼ばれるが、女性活躍も女性だけの視点や男性だけの視点からではなく、双方の人類としての視点から包括的にみないと、男性のよさや女性のよさは見えず、いいアイデアは生まれない。

極端なことをいえば、いま身近でプラスチック製品は「悪い子」扱いされていて、プラスチックボトルはダメとなっている。ただ、一歩引いてみれば、プラスチックボトルによって、食料や水を携帯できなかった極地にこれらを安全に運べるようになり、災害など非常時でも清潔に飲食できるようになった。大事なことはしっかりとした資源管理や再利用であり、宇宙開発の視点は生かされるはずだ。

宇宙開発を想定して作られた技術や発想は地球での事業に還元できるし、いずれ月面旅行や移住が本格化したときにも成長させられる。そのときには地球と宇宙が連続したものであることを多くの人が気づくだろう。諸外国が「宇宙といえばロケット」と意識しているうちに、日本として準備しておくべきだ。

月面旅行が始まったら、私も月面ツアーの添乗員として皆さんをご案内する。その日もそう遠くないでしょう。

劉 彦甫 東洋経済 記者

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りゅう いぇんふ / Yenfu LIU

解説部記者。台湾・中台関係を中心に国際政治やマクロ経済が専門。1994年台湾台北市生まれ、客家系。長崎県立佐世保南高校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、修士(ジャーナリズム)。日本の台湾認識・言説を研究している。日本台湾教育支援研究者ネットワーク(SNET台湾)特別研究員。ピアノや旅行、映画・アニメが好き。

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