宇宙ビジネス市場が急拡大している。
アメリカのスペース財団によると、世界の宇宙関連の市場規模は10年前に20兆円強だったが、2018年に40兆円を超えた。政府や軍が主導するイメージが強い宇宙開発だが、アメリカを中心に民間主導が顕著になっている。
アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏は自身が立ち上げた宇宙ベンチャー、ブルーオリジンに年間1000億円以上の投資を続ける。テスラのイーロン・マスク氏が率いるスペースXは、既存の大型ロケットのおよそ半分の費用で打ち上げられるロケットを開発し、価格破壊を起こした。
日本でもキヤノン子会社のキヤノン電子が主導するロケットベンチャー、スペースワンが発射場の建設やロケット開発を本格化。実業家の堀江貴文氏が立ち上げたインターステラテクノロジズも人工衛星の運搬に必要なロケット開発を進め、世界を追う。
ロケット開発を後押しするのは人工衛星の打ち上げ需要。すでにフェイスブックやグーグルなどが人工衛星によって地球を観測して得た衛星データを活用するデータビジネスを始めている。日本でも日立製作所グループの日立ソリューションズや三井物産などが農林水産業や防災分野などで衛星データの活用を進める。
『週刊東洋経済』3月2日発売号では
「熱狂 宇宙ビジネス 日本はどう戦うか」を第2特集で掲載。日本と世界で宇宙分野をめぐる成長と競争が本格化している様子を描いた。
日本人女性初の宇宙飛行士で、現在は東京理科大学特任副学長を務める向井千秋氏に、日本が歩むべき宇宙ビジネスについて聞いた。
ロケット打ち上げはコスト競争力で負けている
――日本はロケット以外でも宇宙ビジネスを考えるべきだと提言しています。
ロケットや人工衛星は世界の競合がかなり出ている。すでに海外ではマスク氏のスペースXなど、民間のロケットベンチャーが既存の大型ロケットよりも安いロケットを製造している。大量受注をとって打ち上げ回数を増やすなどしており、生産効率が高くコスト競争力もついている。
一方で、日本の民間ロケットベンチャーの中で、安定して打ち上げが成功しているところはまだない。三菱重工業がJAXA(宇宙航空研究開発機構)と開発したH2AやH3ロケットは、技術力があっても打ち上げ本数は少なくコストパフォーマンスが悪い。同じ技術なら、安く、大量に(打ち上げが)できるところに受注はいってしまう。
さらに、アメリカや中国、ヨーロッパと違って、日本は打ち上げ基地などに必要な広大な土地もなく、地の利でも不利な面がある。JAXAは種子島など限られた地域から天候の影響も考えて、打ち上げ時期を苦労して決めている。常時打ち上げられるわけではないこともコストパフォーマンスに影響している。
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