僕は後藤田君に言われるがまま、世界の事例を記載したよりわかりやすい資料を用意しました。内容は、ザハ案は破棄して、野球場に改造する前提でオリンピックスタジアムを建設する「アトランタオリンピックモデル」で行くべきだ、というものです。それを官邸、閣僚の方々をはじめとする数多くの政治家や官僚の方々に説明して歩きました。
ですが結果は、文字通りけんもほろろで「若造が何を勝手なことを……」という状態でした。「間に合うわけないだろ」「これ、XX先生が担当だからそっちに話してみてよ」と、ただただ煙たがられて終わりました。
とはいえ、一部マスコミの方々には響いたようで、当時、後藤田君を取材した記事は今でもネット上にたくさん掲載されています(「後藤田 新国立競技場」で検索すれば、当時の模様が読み取れると思います)。
「新国立競技場」の立地条件は破格
このプラン、新国立競技場が完成した現在でも、まだまだ可能性があります。それくらい「新国立競技場」の立地条件は破格です。
・その大都市のど真ん中
・スタジアム建設可能な面積と環境
・世界トップの集客力を誇る「プロ野球チーム」の存在
東京には、これらすべての条件がそろっているのです。
道路の拡張工事さえ数十年かかってしまう大都市において、これだけの完璧な条件は、ポーカーで言えば「ロイヤルストレートフラッシュ」、麻雀で言えば「九蓮宝燈」とも言える「夢の確率」がすでに実現している状態と言えるでしょう。むしろ「天和」に近い状態かもしれません。
僕は、たいへん残念ではありますが、負のレガシーをつくらないために、解体に近い根本改装、つまりは「野球場」に改装するのが、国家、国民にとって最善の策だと思います。そしてそれが「真のオリンピックレガシー」になりうると思っています。
せっかくつくったスタジアムです。もちろん、僕ももったいないとは思います。でも、毎年24億円の赤字を垂れ流すほうが「もったいない」はずです。
以前から提言しているのですが、プロ野球チームを招致すればすべてのコストの回収はもちろん、「ドル箱化」は確実でしょう。シートやトイレ、建設資材などなど転用できるものも徹底して再利用して、新しいレガシーをつくること。アメリカが先行して実行しているスタジアム改装による収益化は、オリンピック開催が危ぶまれている今だからこそ、真剣に考えうる案件だと思います。
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