五輪中止なら「新国立競技場」はどうすべきか 24億円の赤字を「100億円の黒字」にする方法

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さらにさかのぼれば、2012年からこの新国立競技場計画はスタートしたのですが、ザハ案を採用したときの建設費用見積もりは約1300億円という計画でした。このときの選考審査委員の方々の名簿も明確に残っておりまして、当然のことながら建築の専門家の方もいらっしゃいました。

にもかかわらず、徐々にコストが膨れ上がって、最終的には計画の約2倍近い2500億円以上もの建設費がかかると判明。国民の非難を浴び、政府により白紙撤回されるに至りました。その後、隈研吾氏設計の現・新国立競技場に決定しましたが、建設費用としては1530億円と、ザハ案を採択した当時の金額よりも230億円も高い建設費で決着しました。

反省すべき点としては、そもそもこの建設計画に「スタジアム建設のグローバルスタンダード」がなかったことがあげられます。日本に由来するお寺や神社を宮大工がつくるのではないのです。欧米諸国を起源とするスポーツでありスタジアムです。

その欧米において当時はすでに「スタジアム」は最先端のスポーツビジネスモデルの1つでしたが、その専門家が1人も選考メンバーには存在していませんでした(話は少しそれますが、女性も1人もいませんでした)。

スタジアム「後利用」のお手本となったアトランタ

1990年代からアメリカにおいて、またヨーロッパにおいては2006年にドイツで行われたサッカーワールドカップ以降、世界のスポーツ先進国では「スタジアム改革」がグングンと音を立てるように進んできました。

国立競技場を運営する独立行政法人日本スポーツ振興センター(JSC)が新国立競技場の国際コンペを開いた2012年時点において、欧米では「スタジアムは儲かる」は常識ともいえる状態で、実際にたくさんの「ドル箱」のような収益力の高いスタジアムが新設されています。

日本においてもその「常識」は、特にプロ野球においては「とっくに」立証されていました。例えば、メジャーリーグのスタジアムを徹底的に研究し、2009年に開場した「MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島」です。このスタジアムの総建設費は約110億円です。そもそも1桁違うことに驚きますが、これは誤植ではありません。

もっと驚くべきはその収益力です。広島カープの2019年の総動員数は約222万人です。チケットや飲食などが1人単価5000円としたら、年間で111億円の売り上げです。その他、グッズの売り上げ、ネーミングライツ、球場内を埋め尽くす広告などなど、その収益源は多岐にわたります。「スタジアムはドル箱」が、日本でも実現されているのです。

そもそもプロ野球は年間142試合と興行機会が多く、プロ野球機構の定めるルールとして人工芝が可能ですので、メンテナンス費用を軽減することも、ドーム型にしてコンサート需要をつかむことも可能になり、収益幅はかなり大きいといえます。

そのうえで、「プロ野球とオリンピック」の関係で言えば、1996年の「アトランタオリンピック」におけるオリンピックスタジアムの事例は、世界のスポーツビジネスの常識として、海外では広く知られています。

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