アトランタオリンピックでは、オリンピックスタジアムをオリンピック終了後にメジャーリーグのアトランタブレーブスのスタジアムに改築することを前提に設計・建設されました。ですので、本来は楕円形であるはずの陸上競技場の一角が、ダイヤモンド型の野球場の形状をしています。
それまでは1984年のロサンゼルスオリンピックのように、既存の競技場を改装して「2週間のお祭り」を行うことで、開催都市の経済的な負担を減らす、というのが成功の法則でした。このアトランタオリンピックにより、「スタジアムの後利用」という新しい成功事例が誕生したのです。
ちなみに、このアトランタオリンピックのスタジアムはアトランタブレーブスの使用する野球場になったのち、2017年にジョージア州立大学に売却され、アメリカンフットボールのスタジアムに再度改装されました。
アメリカンフットボールのスタジアムになっても、オリンピックスタジアムの際につくられたダイヤモンド型のスタンドの形状は残ったままです。「レガシー」を思いのままにしゃぶり尽くす。実需に合わせ、躊躇することなく大胆な改装を行うことで収益の最大化を目指す。アメリカのスポーツビジネスの奥深さ、逞しさを実感します。
日本においても「オリンピックスタジアムを国費で建設する」のであれば、これら海外の成功事例は当然ながら検討すべきであったと思います。しかし当時の資料を見ても、そういった議論がなされている様子はうかがえませんでした。
なぜ日本は「世界の常識」を学ばなかったのか
僕の個人的な話で恐縮ですが、今から約5年ほど前に「新国立競技場は大問題なんだけど……」と、同級生で友人である国会議員の後藤田正純君に話しました。もちろん、僕ごときが、こんな大きな話に関われるとはまったく思っていませんでしたが、あまりにも世界の常識とかけ離れたコンセプトと、建設費がどんどん上がっていく様子にいたたまれなくなって、友人に愚痴るような感覚でした。
ただその後藤田君、MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島とアトランタオリンピックの具体例があまりにも衝撃だったらしく、「これはすぐに動かないとダメだ」と、覚悟とともに相当な使命感を感じたようでした。
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