新型コロナ、中国人の「入国制限」遅すぎた代償 世界的な感染拡大、政府の対応は後手後手に

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厚生労働省では、6日からPCR検査を保険適用にして、検査を受けやすくする方針だ。そうするとこれまで明らかになっていなかった”隠れ感染者”が見つかる可能性は高い。同省から公表されている数字にも反映されて、一気に多くなることも否定できない。

この1〜2週間が感染拡大防止の瀬戸際として、安倍首相がイベントなどの自粛を求めてから、すでに1週間が過ぎた。いまさらながらの水際対策の強化と同時に、マスクの買い占め、転売を禁止する措置にも乗り出した。いままで中国人旅行客が開店前のドラッグストアに並び、開店と同時にマスクを買い占めていく光景があった。自分だけではなく、家族や友人のためだ、と言って。積極的な対応だとしても、やはり時期が遅すぎる。

さらには、トイレットペーパーが店先から消えた。デマによる買い占めによるものだ。29日の安倍首相の会見の中でもこのことに触れ、トイレットペーパーのほぼ全量は国内生産であって、十分な供給量がある、と語っているにもかかわらず、買い占めの勢いは止まらない。

もはや首相の言葉を信じないのか、デマをそのまま信じているのか知らないが、いくら注意を呼びかけてもこの国から特殊詐欺の被害がなくならないのも理解できる。あるいは、店頭から消える光景に不安を煽られての行為なら、それこそ”トイレットペーパー恐怖症”とでも呼ぶべき別の感染が起きていることになる。

過去の教訓を生かした台湾

明らかに後手後手にまわる政府の対応。自覚のないままウイルスを撒き散らす現象。そうなると国民一人ひとりの自衛がますます重要になる。

自分が感染しないようにすると同時に、むしろ、もう感染しているのかもしれない可能性も考慮した対策が必須だ。感染していたとしても、絶対に人にうつさない他人を思いやる本当の意味での忖度が必要になる。

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かつてSARSの現場取材で訪れた台湾で、移動にタクシーを利用したときのことだ。運転手が笑い話だとして、こう話してきたことがある。

「台湾の歴史をたどると、これまでに4回侵略されている。最初はオランダに。その次は日本に。3回目は国民党に。そして4回目はSARSだ」

その台湾では、過去の経験から早期の対応で感染者は44人(3月6日時点)にとどめている。それに比べると、日本の感染症対策の認識の甘さが浮き彫りになる。

だが、ここで日本が新型コロナウイルスに侵略されるようなことがあってはならない。

青沼 陽一郎 作家・ジャーナリスト

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あおぬま よういちろう / Yoichiro Aonuma

1968年長野県生まれ。早稲田大学卒業。テレビ報道、番組制作の現場にかかわったのち、独立。犯罪事件、社会事象などをテーマにルポルタージュ作品を発表。著書に、『オウム裁判傍笑記』『池袋通り魔との往復書簡』『中国食品工場の秘密』『帰還せず――残留日本兵六〇年目の証言』(いずれも小学館文庫)、『食料植民地ニッポン』(小学館)、『フクシマ カタストロフ――原発汚染と除染の真実』(文藝春秋)などがある。

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