新型コロナ、中国人の「入国制限」遅すぎた代償 世界的な感染拡大、政府の対応は後手後手に

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1週間前には19都道府県で200人だった日本国内の感染者は、5日までに29都道府県345人になった。クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の感染者や、武漢からのチャーター便帰国者を含めると1000人を超えた。5日には東京・足立区で小学校に通う10歳未満の女児と保育園に通う男児の姉弟が感染していたことも確認されている。

私は2003年に台湾、香港、中国で猛威を振るったSARS(重症急性呼吸器系症候群)の現地取材の経験に基づいて、日本人の感染者が認められた1月の下旬から、警鐘を鳴らしてきた。だが、新型コロナウイルスの影響は、とうにSARSを超えてしまっている。

このウイルスがSARSと違って厄介なのは、感染者の2割が重症化する一方で、8割は軽症であり、無症状のケースもあることだ。2日の政府の専門家会議の見解では、感染していても無症状や軽症である10代から30代の若年層が、自分でも気づかないうちに感染を広めているとした。それで高齢者にうつると重症化しやすい。

大阪で発生したとみられるクラスター

大阪では、2つのライブハウスから、8都道府県以上に感染が広まっている事例が報告されている。大阪市都島区のライブハウスでは、5日までに客や関係者が17人で、その家族など周辺の9人に広まった。クラスター(小規模感染集団)がはじけて、次のクラスターを発生させる連鎖が起きているとみられる。

韓国での急速な感染爆発は、キリスト系新興宗教の礼拝に感染の疑われる信者が参加していたことが原因とされる。そこでは信者が合唱していたとというが、この小規模な感染拡大事例が大阪のライブハウスといえる。

専門家会議では、風通しの悪い屋内の閉鎖的な空間で、至近距離で一定時間交わることによって感染が広まるとして、具体例としてライブハウスのほか、スポーツジム、屋形船、ビュッフェスタイルの会食、雀荘、カラオケボックスなどを挙げている。

SARSでも中国本土から香港をはじめ世界に拡散していったきっかけは、ホテルからだったことは以前にも書いた。中国広東省で新型の肺炎の治療にあたっていた医師が宿泊した香港のホテルの同じフロアの宿泊客に感染していく。そのフロアの廊下も換気が悪く、狭くて閉鎖的なものだった。ほぼ、パターンは重なっている。

ただ、大阪のライブハウスからの感染は、症状が出て発覚したり、濃厚接触者を検査して判明したものだが、無症状や軽症者はその自覚すらないまま市中を出歩いている。

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