野球界「中止・延期・無観客」迫られる苦渋の決断 既にオープン戦無観客、スポーツ興行大打撃

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例え無観客試合を回避することができても、試合日程の変更などが度重なれば、客足が遠のく可能性はある。また現在の応援スタイルがウイルスの感染を広げる可能性に言及する医療専門家も出てきている。ファンの中にはこれまでのようにジェット風船を飛ばしたり、集団で大声を上げたりすることに躊躇するかもしれない。

景気とは人々の「気」だと言われるが、今回の新型コロナショックが、プロ野球ファンの「気」を削ぐ可能性は大いにある。

今年観客動員が、昨年を下回れば「プロ野球は落ち目」という印象まで広がることだろう。

筆者はもともと、今年が日本野球の転機になる可能性が大きいと思っていた。東京オリンピックの野球競技決定以降、日本野球界は、盛り上がりを見せていたが、野球界からは「その後」のプランが何も提示されてこなかったからだ。五輪後には「野球離れ」が顕在化するのではないかと観測していた。

そこに新型コロナショックが重なったことで、日本野球は一転して厳しい局面に直面する可能性がある。

経営者出身のトップが「プロ野球は今、問題がない」と言うような能天気な時代は過ぎたと考えるべきだろう。

野球界はリアルな将来展望をするべき時を迎えている。

Jリーグの姿勢を見習うべき

今回、NPBはJリーグと共同で「新型コロナウイルス対策連絡会議」を設置した。医師など専門家の意見を共同で聴取して、今後の判断をしようというものだ。決定は各団体で独自に行うが、その過程では協議もする。かつてないことであり、本当に有意義だと思う。

3月10日前後には何らかの決断をすることになる。おそらくは日本高野連もNPB、Jリーグの決定を注視しているはずだ。

Jリーグはこれまでもクラブ、サポーター、スポンサーなどすべてのステークホルダーのことを勘案して物事を決めてきた。また目の前の利害ではなく「Jリーグ百年構想」にのっとって判断をしてきた。

プロ野球は2011年の東日本大震災のときには、開幕時期をめぐってセ・パ両リーグの足並みが乱れた。時の政府の要請で最終的には日程をずらして同時開幕となったが「野球界は、一枚岩ではない」「自己の利益ばかり考えている」という印象を世間に与えた。

NPB関係者は、Jリーグの価値観や世間に向き合う姿勢を学んでほしいと思う。

そして将来、振り返ってみたときに「あのときの判断は立派だった」と言えるような決断をしてほしい。

広尾 晃 ライター

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ひろお こう / Kou Hiroo

1959年大阪市生まれ。立命館大学卒業。コピーライターやプランナー、ライターとして活動。日米の野球記録を取り上げるブログ「野球の記録で話したい」を執筆している。著書に『野球崩壊 深刻化する「野球離れ」を食い止めろ!』『巨人軍の巨人 馬場正平』(ともにイースト・プレス)、『もし、あの野球選手がこうなっていたら~データで読み解くプロ野球「たられば」ワールド~』(オークラ出版)など。

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