野球界「中止・延期・無観客」迫られる苦渋の決断

既にオープン戦無観客、スポーツ興行大打撃

MLBの場合、本拠地球場はすべて球団の持ち物だ。スケジュールは公式戦が最優先されるから、日程変更はそれほど難しくない。

一方で、NPBでは球団やグループ企業が本拠地球場を所有しているのは、西武(メットライフドーム)、ソフトバンク(福岡PayPayドーム)、オリックス(京セラドーム大阪)、DeNA(横浜スタジアム)、阪神(阪神甲子園球場)、中日(ナゴヤドーム)の6球団だけだ。

他の球団は球場を借りている。日程を自由に動かすわけにはいかない。またグループが所有する球場でも、稼働率を上げるため、催事予定を入れていることが多い。日程変更は、極めて複雑な利害関係の調整を伴う難題なのだ。

延期が難しいのであれば、中止したほうが無観客試合よりも経済的損失は少ない。しかし、1936年から連綿と続くプロ野球の公式戦を、外的要因とはいえ中断、短縮するのはこれまた簡単な話ではない。

MLBでは選手会のストライキなどで何度かシーズンが短縮されたことがあるが、NPBが当初計画した試合日程を短縮したのは、2004年球界再編の時にストライキによる2試合が削減された一例があるだけだ。

【2020年03月07日11時30分追記】初出時、2004年球界再編時の試合開催について誤りがありましたので上記のように修正しました。

NPBにとって、公式戦を行うことは最も重要な責務だ。中止は何としても避けたいところだ。

NPB各球団は、突如、大きな危難に見舞われた。上場企業ではないので、球団の細かい収支は明らかにされていないが、無観客試合が続けば、黒字だった球団が赤字に転落する場合も出てくると想定される。親会社が補填する球団もあるだろうが、球界再編に結びつく可能性さえある。

日本野球の「暗転」につながらないか

筆者がこうした経済的な損失以上に危惧するのは、この新型コロナウイルス騒動が、表向き右肩上がりの成長を続けてきた日本野球の「暗転」につながらないかということだ。

2019年の同時期、NPBの斉藤惇コミッショナーは
「NPBは今、非常に安定している。特に球場を持っているところは収益が安定している。そうでないところも強いチームを持って、経済的な問題がない」と言い切った。

この背景にはNPBの観客動員が史上最多の2555万人(2018年)を記録したことがある。2019年はさらに観客数が伸びて2653万人余となった。

実際にはこの観客動員は、各球団のリピーターへの濃厚なマーケティングによるものであって、ファン層はほとんど拡大していない。そして若年層では急激な「野球離れ」が進行している。

しかし、プロ野球の観客数がここ数年「史上最多」を更新していたために、一般社会では「プロ野球は我が世の春」という認識が定着していたのだ。それはプロ野球の社会的信用を高めるうえで大きかったと思うが、公式戦の無観客試合などが実施されれば観客動員を更新するのは難しくなる。

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