佐藤浩市が振り返る「Fukushima 50」と3.11 「後世に伝えるために作品を作る意義がある」

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――角川大映スタジオに、第1・2号機中央制御室のセットが作られました。福島第一原発の勤務経験者の方も驚くほどにリアルなものだったそうですが。

たまたま僕は、撮影に入る前に浜岡原発を見ることができた。当然ながら、書籍などで勉強したとしても、それは机上で理解したにすぎない。毎日、そこで実際に働いていた人とは違うわけです。

だからそのすべてを伝えることは不可能だと思うんです。しかしそれでも、そこで見たものは、できるだけみんなにも伝えるようにしたし、中央制御室は写真を撮ってはいけないと言われたにもかかわらず、美術部がほぼ忠実に再現してくれました。

事件を後世に残すためにもリアルな描写が必要

――今、福島第一原発は廃炉作業の真っ最中です。そこで見てきたものは何だったのでしょうか。

先ほどみんなに伝えたと言いましたが、廃炉がどこまで進んでいるのか、実際に中に入れないわけだからわからないわけです。そういうことも含めて、ロボットが内部に入ってどうのといったニュースが時々流れますが、それくらいしかわからないということが現実ですよね。

劇中では福島第一原発1・2号機当直長・伊崎利夫役を演じる ©2020『Fukushima 50』製作委員会

結局、起きてしまったことは起きてしまったこと。天災と人災の境目がどこにあるのか、それはみんな、後年判断すること。なんとか負の遺産を、自分たちが少しだけでも形を変えて、明日、あさってのみんなに渡していける遺産に変えていくように、ということでしかない。

そのために、こういう映画をやるわけですが、現実的に被災者の方が観ると、苦しくなるような描写もあると思います。そこで映画館を出られる方も当然いるだろうとは思います。

ただ、それを経験してきた我々だけでなく、経験をしていない未来の人たちが、これを観て、考えてもらうためには、どうしてもそういうリアルな描写が必要だった。それを観ながら、なんとか負の遺産でなくなるように変えていきたい、ということですよね。

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