気候大変動が地球と人類に与えうる「12の脅威」 暗澹たる未来図が示すのは団結せよという号令

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10:経済崩壊が世界を揺るがす

比較的温暖な地域では、平均気温が1℃上昇すると経済成長が1パーセント抑えられるという研究結果がある。経済生産性に最適な気温は、年平均13℃との計算もある。アメリカをはじめとする世界の経済大国が、現在ちょうどそのぐらいの気温だが、気温の上昇により生産性も下がる。

同じ研究者たちによれば、パリ協定の現状の国別目標を達成して、気温上昇の幅が2.5~3℃になった場合、今世紀末の1人当たりの経済生産高は15~25パーセント減少するという。4℃なら、経済生産高は30パーセント減るだろう。世界を大不況が襲い、ファシズムや権威主義の台頭を許し、大虐殺を招いた1930年代の2倍の落ち込みとなる。

11:気候戦争の勃発

気温と暴力の関係を数値化する研究によると、平均気温が0.5℃上がるごとに、武力衝突の危険性は10~20パーセント高くなるという。平均気温が4℃上昇した世界では、戦争の数が2倍になる。

戦争は世界の平均気温の上昇と直結はしていなくても、気候変動がもたらす不安や連鎖反応が総計された最悪の展開であることはたしかだ。

2050年までに2億人の気候難民が発生?

12:大規模な気候難民

国連が発表した数字では、温暖化の現状がこのまま続けば、2050年までに2億人の気候難民が発生するという。国際移住機関(IOM)は、最大10億人の難民を生むと主張する。

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難民は、国家破綻の問題と思われがちだが、ハリケーン・ハービーではテキサス州で少なくとも6万人の気候難民が生まれ、ハリケーン・イルマでは700万人近くが避難した。2100年には、アメリカでは海面の上昇だけで1300万人が住むところを失うことになるだろう。

海面上昇にしろ、食料不足や経済不振にしろ、現実にはそれぞれの要素が打ち消し合うこともあれば、反対に強め合うこともある。すべてが複雑にからみあって環境危機となり、人間はそのなかで生きていかねばならない。

個人的には、暗澹(あんたん)たる未来図を見せられたほうがやる気をかきたてられる。それは団結して行動せよという号令であり、またそうあるべきだと思う。地球という星はすべての人のふるさとであり、そこに選択の余地はない。しかし、どんな行動を起こすかは一人ひとりの手にかかっている。

デイビッド・ウォレス・ウェルズ 新アメリカ研究機構ナショナル・フェロー

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David Wallace-Wells

アメリカのシンクタンク〈新アメリカ研究機構〉ナショナル・フェロー。『ニューヨーク・マガジン』副編集長。『パリ・レヴュー』誌元副編集長。2017年7月、気候変動の最悪の予測を明らかにした特集記事「The Uninhabitable Earth」を『ニューヨーク・マガジン』に発表し、同誌史上最高の閲覧数を獲得。2019年、記事と同タイトルの書籍(邦題『地球に住めなくなる日―「気候崩壊」の避けられない真実』NHK出版)を上梓。ニューヨーク・タイムズ、サンデー・タイムズ両紙のベストセラーリストにランクインするなど世界で大反響を呼んだ。「ニューヨーク・タイムズ紙、2019年ベストブック100」選出。ニューヨーク在住。
(写真ⓒBeowulf Sheehan)

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