GDPの計算上、輸出から輸入を差し引いた貿易収支(輸出が多いなら貿易黒字)や受取額から支払額を差し引いたサービス収支がプラスならGDPは増えることになる。
東日本大震災以降、日本の原子力発電所の多くが停止し、石油や天然ガスの輸入が増えたために日本の貿易収支は赤字に転落した。2016年以降、貿易黒字に転じたものの、米中貿易摩擦の影響で輸出が低迷したため、再び貿易黒字幅は縮小している。その結果、2019年の貿易黒字が約5500億円なのに対し、観光関連サービスの黒字幅は約2.1兆円と貿易黒字額を凌駕している。
観光依存度がもっとも高いのはタイ
新型コロナウイルスの影響を考えると、日本が得意とする中間素材などの対中輸出は減少する一方、中国からの消費財などの輸入も同様に減る可能性が高い。つまり、GDPの計算上、貿易収支の影響は短期的にはニュートラルになる可能性がある。
一方、観光関連サービスは、日本人の海外旅行が減少する一方、中国や韓国などアジアからのインバウンド観光の減少はそれ以上に大きいことが予想される。その結果、観光関連サービスが悪化し、GDPにマイナスの影響を与えそうだ。最悪のケースとして、現在の観光関連サービスの黒字幅2.1兆円が仮にゼロになるとすると、リーマンショック時の貿易黒字の減少幅が約8兆円だったので、その4分の1のインパクトを与えそうだ。
とはいえ中小経営の多い宿泊業、飲食サービスでは資金繰り悪化が必至であり、政府の対応は急務になっている。
なお、名目GDPが4000億ドル(約43兆円)以上の国(27カ国)のうち、国際観光収入がGDPに占める割合をランキングすると、断トツの1位はタイ。スペインやフランス、アメリカなどと比べて国際観光収入の金額は小さいが、タイ経済にとって国際観光の存在感は大きい。今回のコロナウイルスショックが観光産業を通じて与える影響は国によって多少異なるだろうが、経済への影響度を測る1つの目安になりそうだ。
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