当面の焦点は、イベントの中止や消費自粛、学校の休校などによって国内消費がどこまで落ち込むのかだが、これまで景気拡大を牽引していた訪日外国人観光客の落ち込みも気にかかる。
訪日観光客数は日本銀行の大規模金融緩和によって円安が進行したことを契機に、2003年以降に急拡大した。外国人旅行者が日本滞在中に支出した宿泊費や飲食費、土産物代など(サービス収支・旅行)に、日本への往復旅客輸送運賃を加えた「サービス収支/観光関連サービス」という統計が公表されている。
外国人客の急減影響は大きくない?
長いこと1兆円台で推移してきた観光関連サービスの受取額(訪日外国人による支出額)は毎年拡大を続け、2019年にはついに5.3兆円に拡大した。
観光関連サービスの急落は、2008年のリーマンショック時に当時の景気牽引役だったアメリカ向けの自動車輸出を中心に、輸出が急減した動きと似ている。2012年に発足した安倍政権は円安誘導を続けたが、結果的に輸出はさほど増えず、円安で日本旅行が割安になったことから、インバウンド観光需要が急増した。
ただ、今回の外国人客の急減は、リーマンショック時に輸出が急減したケースほど、日本経済にとってダメージを与えないと予想される。一つは、貿易収支上の輸出や輸入はそれぞれ70兆~80兆円(2019年)規模であるのに対し、観光関連サービスの受取額や支払額(日本人による海外旅行支出)はそれぞれ5.2兆円、3.1兆円と1桁少ないからだ。
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