核廃絶交渉で試されるオバマ大統領の指導力--ジョセフ・S・ナイ ハーバード大学教授
国防の規模と構成を規制する国際的な合意も上院で議論されている。ただ、新STARTとCTBTは、すでに議会の反対派議員とメディアの懐疑を呼び起こしている。来年、両条約を上院に提出するためには、両条約が国家と世界の安全保障を高めるのに有用であることを国民に納得させなければならない。もしオバマ大統領が国民の説得に失敗し、上院が両案の双方あるいは一方を否決すれば、核不拡散体制に大きな悪影響を及ぼすことになるだろう。
オバマ大統領は何をすべきか?
来年5月にはNPT批准国189カ国が、同条約の現状を検討するためにウィーンで会合を持つ予定だ。1970年にNPTが発効した際の目的は、核保有国の数を5カ国(米ソ英仏中)に制限することであったが、全体として見れば同条約は成功だった。60年代にはケネディ大統領を含む多くの人々は、将来、核保有国は数十カ国に達し、核兵器が実際に使用されうると思っていた。
70年以降、条約の調印を拒否したインド、イスラエル、パキスタンの3カ国が新たに核保有国となった。さらに北朝鮮も条約に違反し、2度にわたって核爆発実験を行っている。イランが核兵器開発計画を持っているかもしれないという疑いから、国際的な非核拡散体制が瓦解するかもしれないという懸念も強い。
危機を回避するには、国際的、協調的、持続的な努力が必要である。新STARTとCTBTの批准は有益だ。たとえば、新兵器削減協定は米ロ関係を改善することになり、国連安保理でのロシアのイラン問題に関する姿勢はより建設的なものになるだろう。上院がCTBTを批准すれば、アメリカに対する信頼性が回復するはずだ。
来年3月には、オバマ大統領は「核密輸」と「テロとの戦い」に関する新政策を策定するため、世界核安全保障サミットを主催する予定だ。併せて、「核兵器廃絶」という長期目標も提案しており、それが精神的な目標ではなく実際的な目標になるためには多くの準備作業が必要となる。