住宅購入者も無縁でない深刻化する施工者不足 家づくりの現場にある「今そこにある危機」

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住宅の施工現場にはさまざまな仕事をする人たちがいる。写真は外壁関連の作業を行う職人(筆者撮影)

余談だが、軽微な欠陥は住宅の建築には付き物だ。それは信頼感が高いと考えられる大手ハウスメーカーでも同様である。というのも、住宅の施工現場には、大工以外にさまざまな職種の人たちが多数出入りし、人手がかかる分、ミスが発生しやすいからだ。

簡単に紹介すると地盤、基礎、足場、躯体、外装、内装、電気、水道、設備、外構などがあり、これらの中にもいくつかの職種がある。それらの職種に人たちを束ね、工程の管理や施工品質などをチェックするのが現場監督と呼ばれる人で、彼らはハウスメーカーに属するのが普通だ。

現場見学の重要性

では、具体的にどうすればいいかだが、仮に注文住宅(新築)の場合なら、検討段階で依頼することが予想されるすべての住宅事業者の建築現場を見学していただきたい。その過程は依頼先を決断するための材料の1つになるはずだ。

分譲住宅を購入するケースでも、購入先となる事業者のほかの施工現場に必ず足を向けるべきだ。そこで一般の人でもできる確認点は以下の3つだ。

・整理整頓され清潔感があるか
・大工などが元気な声で挨拶してくれるか
・ヘルメットの着用など安全対策を行っているか

あらを探す必要はない。大切なのはあくまで施工現場がしっかりと管理された状態にあるかを確かめることだ。整理整頓もあいさつも、住宅事業者による協力工事店の教育、施工品質を大切にする姿勢がよく表れる。

モノが散乱した管理が不十分な施工現場のイメージ(オーストラリアで筆者が撮影)

商談の段階で、現場見学を嫌がるような事業者との契約は避けたほうがいい。施工品質に自信がない、質が低い事業者である可能性が高いからだ。このような事業者は、コストの安さにしか取り柄がない傾向がある。

住宅取得は一生で最も高価な買い物だと言われる。現場見学などを面倒に感じる人もいるかもしれないが、このような地道な検討作業を積み重ねることが、長期的な満足度の高い、安心・安全な住まいを獲得するコツなのである。

最後に、リフォームについて触れておく。新築以上に事業者選びに注意が必要だ。というのも、新築に比べ事業者の参入障壁が低く、住宅関連事業をルーツに持たない事業者も存在するなど、質が玉石混淆であるためだ。

リフォームといっても工事内容は大小さまざまであり、事業者には得意・不得意もある。それらを見極め、工事の内容や段取りなどをしっかりと説明してくれる事業者を選ぶべきだ。価格の安さだけを売り物にする事業者は避けたほうがいいことは言うまでもない。

田中 直輝 住生活ジャーナリスト

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たなか なおき / Naoki Tanaka

早稲田大学教育学部を卒業後、海外17カ国を一人旅。その後、約10年間にわたって住宅業界専門紙・住宅産業新聞社で主に大手ハウスメーカーを担当し、取材活動を行う。現在は、「住生活ジャーナリスト」として戸建てをはじめ、不動産業界も含め広く住宅の世界を探求。

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