住宅購入者も無縁でない深刻化する施工者不足 家づくりの現場にある「今そこにある危機」
もうすっかり死語になっているが、建設業の仕事はガテン系、3K(きつい、汚い、危険)職種と評されてきた。建設業界の長期不況の影響もあり、若者から敬遠されがちな職種となっているわけだ。
また、施工現場に高齢者が多いことのデメリットとして、体調不良などで突如仕事ができなくなることがある。そうなった場合、工事期間の長期化をはじめ現場全体への負荷が高まり、欠陥の発生にもつながりかねない。
将来的にはさらに深刻さが増す
要するに住宅を含む建設業界では高齢化と、若年層の就労の少なさというダブルパンチに見舞われており、 中長期的に見て施工を担う人材の確保が抜き差しならなくなっているのだ。ここまでは現状についてだが、将来予測はさらに厳しくなると見られている。
野村総合研究所の2018年6月の発表によると、2030年の新設住宅着工戸数を60万戸と推計したうえで、大工人口が「2030年には21万人(2015年は35万人)にまで減少することが見込まれる」としている。
この数字は深刻だ。生産性を飛躍的に向上させる必要があるためである。具体的には従来、年間約2戸で推移してきた大工1人当たりの新設住宅着工戸数を「2030年には約1.4倍引き上げる必要がある」としているからだ。
このような厳しい見通しがある中、住宅業界では近年、施工の合理化、効率化と同時に、施工力を確保するための取り組みを行うようになってきた。大きく以下の3つがある。
・外国人労働者の投入
・最先端技術の導入
自前での育成とは、大工などの訓練学校を設け、そこで施工協力会社の若手社員なども含め、技能訓練を施すことだ。なかには、訓練期間中から一定額の給与を支払い、訓練後には安定的に仕事を発注する、などといった取り組みを行っている事業者もある。
若者が住宅を中心とする建設業に就職、定着しづらいのは、従来の育成スタイルが徒弟制度的で技術の取得が難しく、かつ、とくに若い頃は収入が安定しづらいという状況があったためだ。自前での育成ではそうした点の改善を図ろうとしている。
ただ、これは施工者不足を早急に解消できるものではなく、建設業界で働くことのイメージアップや、各地の工業高校などとの関係強化など、地道な取り組みがより重要になっているし、実際そのような動きを見せる住宅事業者も存在する。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら