「新型フィット」の姿形が大胆に変化した必然 道具としての美しさや心地よさを重視した

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クロスターのインパネ(筆者撮影)

インパネ自体も、ドライバーを中心にディスプレイやスイッチを配置したスポーティーな造形から水平基調に戻り、エアコンスイッチはダイヤル式となるなど、この部分も初代を思わせるような造形になった。そのうえでセンターコンソールやドアトリムを含めてソフトなパッドで覆うことで、柔らかいイメージも出している。

広報資料では、心地よい視界とノイズレスインテリアという言葉を使っている。よく言えばにぎやか、悪く言えば煩雑なインパネが多かったホンダがノイズレスという言葉を使うことからも、デザインの方針転換がうかがえる。ステアリングまで最近珍しい2本スポークにしているのだから徹底している。

心地よさへのこだわりの結果

センターコンソールが長く後方まで伸びているのも新型の特徴だ。CVTのセレクターレバーから後は2本のレールを配したトレイになっており、コンソールボックスなどを好みに応じて後付けできる。

新型フィットのセンターコンソール(筆者撮影)

心地よさではシートも気になる。フィットは前席下に燃料タンクを置くという設計を、初代以来の伝統としている。おかげでクロスターを除けば4mを切る全長ながら、身長170cmの筆者であれば楽に足が組めるほどの広い後席空間と、ワンタッチで低くフラットに折り畳めるシートアレンジを実現しているが、逆に歴代の前席は座面の薄さが気になることが多かった。

クロスターの前席(筆者撮影)

そんな声はホンダにも届いていたのだろう。新型は座面のパッドを前席で30mm以上、後席で24mm厚くしている。ここもまた心地よさへのこだわりの結果なのだと理解した。

コンパクトカーはキビキビした走りが魅力のひとつであることから、多くの車種が元気さや活発さをアピールするデザインを目指しがちだ。そんな中でホンダeからN-WGN、そして新型フィットと続く、道具としての美しさや心地よさを重視したデザインは、このクラスではほかにシトロエン「C3」があるぐらいであり、実際に目にすれば多くのライバルとの違いを実感するだろう。

森口 将之 モビリティジャーナリスト

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1962年生まれ。モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)。

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