貨幣という「資本主義最大のミステリー」に挑む 「欲望」の時代の「哲学と資本主義」の謎を探る

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限りない創造のエネルギーを与えてくれるのも、「やめられない、止まらない」と自縄自縛にさせるのも、どちらも欲望の仕業と考えると、実に裏腹な人間の性、業というモノと付き合っていくことの面白さと難しさを感じるわけですが、天使と悪魔に引き裂かれるなか、その綱渡りをどうすべきか、どう考えることで成立させるのか……、「欲望」シリーズの探究が終わらないゆえんです。

岩井克人氏による「欲望の貨幣論」

――そうした問題意識を反映して、このたび「欲望の貨幣論」も書籍化となりますね。

丸山:「欲望の資本主義」の特別編として2019年7月にお送りした「欲望の貨幣論」の中で、岩井克人さんへの取材、さらに書籍化のために改めてお願いしたインタビューをあわせ1冊の書籍にまとめました。

岩井さんのお言葉に加え、番組内で触れたトピックスについても解説をつけさせていただています。1993年の「貨幣論」以来、岩井さんが取り組んでこられた、欲望の表象たる貨幣への洞察が、仮想通貨=暗号資産、さらにキャッシュレス化などお金をめぐる状況が、デジタルテクノロジーで大きく変化する時代にマッチして語られています。

われわれの「欲望」シリーズの視点ともうまくリンクして、この時代に多くのみなさんに届けるべき内容になったと思います。

――あまりテレビではお見受けしない岩井先生が、よくご出演をお引き受けになられましたね。

丸山:それだけ、現在の状況に強い危機意識を持ってらっしゃったのだと思います。経済現象の本質を理論的に追究されるお仕事において研究者として輝かしい成果を上げられたわけですが、そのメッセージを多くの方々に今こそ届けなくてはならないという使命感もおありだったように感じました。

実際、貨幣への過剰な執着と同時に、一方では「お金がなくなる……」といった声もある今の世の中です。いよいよねじれ、錯綜する資本主義を考えるとき、歴史上の巨人たちの葛藤から学べること、まさに岩井さんのように徹底的に本質を考え、あえて抽象度の高い理論を突き詰めていくことで浮かび上がる逆説から学べることも多いと思います。

テクノロジーがすべてを牽引していくこの時代、いっそ「ビッグデータの言うままになるほうが幸せだ」という声もあります。経済の論理が、社会を、世の中の構造を大きく変えていくことを視野に入れていかねばなりません。

そうした時だからこそ、その中心にあって、実はその価値の根拠を誰も明確に捉えきれていないかもしれない貨幣という不思議な存在について、岩井さんの語りととも考える「資本主義最大のミステリー」にご一緒できれば、と思います。

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