貨幣という「資本主義最大のミステリー」に挑む

「欲望」の時代の「哲学と資本主義」の謎を探る

欲望があるからこそ、ダイナミックな変化が生まれ、社会は活性化しますし、そもそも、それがなければ私たちも生きていけないでしょう。

しかし、同時にその方向性が何かの間違いでひとつねじ曲がれば、自らを苦しめるものにもなるわけです。変化を生む、イノベーションを生む、ということが強迫観念となって、自らを苦しめる皮肉な状況も起こります。自分で自分がわからなくなり、やめられない、止まらない……という、欲望の負の側面が浮上します。

「欲望」は時代によって形を変えてきた

このお話は以前もしましたが、もともと10年前の映画、クリストファー・ノーラン監督の『インセプション』を観たときにインスピレーションを得て生まれた企画です。無意識の中に植え付けられた思考、情動、それが欲望の形を規定しているとしたら。

社会の基底に、時代時代の駆動力となる「欲望」の形があり、例えば数百年単位で歴史の流れを振り返ってみたときにも、利子という「時が富を生む」という着想が社会に広まり覆うことで世の中が動き始める時代があり、そのうちに重商主義という空間の差異で富を生む時代があって……と、巨視的に時の流れを俯瞰して見れば、今という時代をどう捉えればよいのか?

「ポスト産業資本主義」と呼ばれる現代は、「モノからコト(事)、トキ(時)、イミ(意味)」などと消費の形が変化したとも言われるように、その重心が無形の体験などへと移り、さらに感情、ある意味精神の商品化という状況を生んでいます。工業主体の時代の物の機能などに付加価値がつくわかりやすい経済の構造ではなく、アイデア、想像力/創造力に経済の推進力がかかっているのです。

と同時にそれは、無形の、際限のない差異化の競争も意味するわけで、その構造をメタレベルで認識していないと、ゴールの見えないレースに疲れ、燃え尽きてしまう人も生んでしまいやすい側面を持っているのだと思います。

「欲望の資本主義」の中でも、かつてフランスの知性ダニエル・コーエンによる「現代の社会は、すべての人に創造的であれ! さもなくば死だ!と迫るようなもの、すべての人が芸術家となることを強制する社会は幸せとは言えない」という名文句がありました。

――そうした時代に求められる「企画」ということですね。

丸山:欲望のお話をしていると、いつも思い出すのは、モーリス・メーテルリンクの幸せの「青い鳥」です。ある意味、「ないものでねだり」、実は、探さなければいつも近くにいるのかもしれません。

次ページ「欲望の貨幣論」の書籍化にあたり
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