貨幣という「資本主義最大のミステリー」に挑む 「欲望」の時代の「哲学と資本主義」の謎を探る

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そして、1つのクライマックスは、貨幣はこの人間社会にあって、なんのためにあるのか? その問いへの答えです。そして、それは単に倫理的な答えにとどまるものではなく、実際問題としての信用経済がなぜ危ういのか?という問いへの答えともなっています。ぜひそのあたりを、味わっていただきたいと思います。

そのほかにも、自由を守るためには自由放任とは決別しなくてはならないなどの強いメッセージもいただきましたが、そうした論理がなぜ導き出されるのか? ぜひこうした問いについて、改めて考えるきっかけとなれば、うれしく思います。

――実は岩井さんとのご縁は学生時代からだそうですね。

丸山:1985年に世に出た『ヴェニスの商人の資本論』、それ以前からの『現代思想』誌上でのご発言などにずっと触れていた身からすれば、少なからず岩井さんの思考の影響を受けてきたように思います。

他大学の学生でありながら、岩井さんの講義に潜り質問までしたエピソードについても少しだけ本書で触れましたが、こうして35年ぶりに「質問」の答えをいただき、映像で、活字でまとめさせていただくことになるとは、実に数奇な思いがします。

貨幣を通して人間存在の原点を考えるきっかけに

岩井さんの思考はいつも本質的なパラドックスへと導かれるのですが、そのパラドックスは、経済現象にとどまらず、貨幣、言語、法、社会……、そして人間存在の原点についても想いをはせることにつながるように感じます。

このパラドックスとどう付き合っていくべきか? これは、ある意味知的な喜びに満ちたミステリーであり、そこから逆に照射されるのは、実は私たちの意識の持ち方でもあるといつも感じます。そのとき、つねに何らかの「合理的」根拠を求めてしまうことがむしろ足かせとなることもあるのかもしれません。

わからないことをわからないままに付き合っていけるのも実は大事なセンス……、どうぞ、貨幣をきっかけに、市場、資本主義の逆説の謎を真摯に楽しむ旅にご一緒しましょう。

丸山 俊一 NHKエンタープライズ エグゼクティブ・プロデューサー/立教大学特任教授/東京藝術大学客員教授

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まるやま しゅんいち / Shunichi Maruyama

1962年長野県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、NHK入局。「欲望の資本主義」「世界サブカルチャー史 欲望の系譜」「欲望の時代の哲学」などの「欲望」シリーズのほか、「ネコメンタリー 猫も、杓子も。」「地球タクシー」などをプロデュース。過去に「英語でしゃべらナイト」「爆笑問題のニッポンの教養」「ソクラテスの人事」「仕事ハッケン伝」「ニッポン戦後サブカルチャー史」「ニッポンのジレンマ」「人間ってナンだ?超AI入門」ほか数多くの異色教養エンターテインメント、ドキュメントを企画開発。著書に『14歳からの資本主義』『14歳からの個人主義』『働く悩みは「経済学」で答えが見つかる』『結論は出さなくていい』など。

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