■生姜が変える永谷園のイメージ
永谷園の製品で思い浮かぶものは何だろうか。
お茶漬け、ふりかけ、即席みそ汁、ちらし寿司やチャーハンやそうざいの素……などだろう。それらは消費者にとって、もしくは家庭でどのような存在だろうか。「ササッと食べられて便利」。「ササッと料理が作れて便利」。つまり、手間や時間短縮(Time saving)という効用を提供してくれる。
一方、生姜部が開発した、スープや飲料、菓子などを展開する「冷え知らずさんの生姜シリーズ」はどうだろうか。「冷えを解消する」「血行をよくする」という、女性特有の悩みに向けた製品である。その効用は単に「便利」を超え、「これがあって良かった!」という気持ち(Peace of mind)を提供する製品であるといえる。
つまり、生姜部の製品は従来の永谷園製品より、一歩消費者の心に入り込んで、「なくてはならない存在」というポジションを獲得することができるのだ。
前述の「社外生姜部」の効果も無視できない。
社外生姜部には二つの会員資格がある。「オンライン部員」と「特別生姜部員」だ。オンラインはメールを中心とした気軽に参加できる資格であるが、特別生姜部員は生姜レシピのムービーへの出演や商品開発にも携われる代わりに、「生姜履歴書の提出と面接試験」がある。前項で述べた、「これがあって良かった!」という気持ちを提供する製品は、「熱狂的なファン」を生むのである。
元東京大学大学院教授・丸の内ブランドフォーラム代表の片平英貴氏が提唱している「AIDEES」という消費者行動モデルがある。製品を認知(Attention)・関心(Interest)・欲求(Desire)した後に経験(Experience)し、その良さに惚れ込み(Enthusiasm)、人に推奨(Share)するというものだ。
伝統的な消費者行動モデルであるといわれるAIDMAに代わる、インターネット時代の新たな行動モデルといわれるAIDEESが生姜部では正に現実のものとなっている。冒頭に示した日経ビジネスの記事では、「季節ごとに入れ替える飽きさせないメニュー構成や口コミ効果も手伝って売れ行きは順調に伸びた」と分析している。生姜部とその製品の価値は口コミによって喧伝されていくのだ。
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