クルーズ船集団感染に見る新型肺炎追加リスク 日本国内でも都市型感染拡大の懸念は残る

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新型コロナウイルスによる肺炎の被害が世界的に拡大。横浜港にはクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」が着岸したが、2月19日以降まで下船できない見込みになっている(写真:ロイター/アフロ)

横浜港に停泊中のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」。乗客と乗員およそ3700人のうち、2月10日までに135人が新型コロナウイルスに感染していることが確認されている。

このクルーズ船こそが、新型コロナウイルスのアウトブレイクの典型であり、都市型感染の縮図といえる。

私は、2003年に同じコロナウイルスによるSARS(重症急性呼吸器症候群)が猛威を振るった当時、中国、香港、台湾をまわって、感染ルートをたどった取材経験を持つ。そして、中国・広州市の野生動物の市場で発生したとされるSARSが、中国国外に感染が拡大していった決定的な原因はホテルであったことは、以前にも書いた(『新型肺炎、SARS流行時に学ぶ次の危険シナリオ』)。

ホテルでの集団感染が世界的に拡大

広州市で新しい肺炎(SARS)の治療にあたっていた医師が、香港の九龍にある「メトロポールホテル(京華国際酒店)」に宿泊したことから、同じフロアの同宿者に感染して、香港、カナダ、ベトナム、シンガポールへと拡散していった。

2002~2003年に大流行したSARSもこのホテルから集団感染が世界的に拡大した(2003年筆者撮影)

皮肉にも医師の泊まった部屋番号は北米の緊急通報電話番号と同じ「911」だった。この部屋のたった1人の感染者からはじまっている。

豪華客船とも呼ばれるクルーズ船はいわば「海に浮かぶホテル」である。

今回のダイヤモンド・プリンセスは、1月20日に横浜を出発、25日に香港に寄港、ベトナムや台湾を経て2月3日に横浜に到着した。途中の香港で下船した香港在住の1人の80歳男性が新型肺炎を発症したことから、船内での感染が疑われ、結果として130人以上から新型コロナウイルスが確認されている。

そうなるとホテルは、感染拡大の恐れが最もある場所といえる。東京や大阪などの都市部でアウトブレイクが起こった場合、ホテルからはじまると考えたほうがよい。

また、新型コロナウイルスの基本再生産数(感染率)は、暫定的に罹患者(りかんしゃ)1人に対して1.4〜2.5人と見積もられていた。中国疾病対策予防センター(CDC)の最新の報告でも、2.2人とされる。

しかし、ダイヤモンド・プリンセスの場合、1人の老人から感染が広まったのだとすると、その数をはるかに上回る。2次感染、3次感染が起きていたとするならば、感染者の潜伏期間にも差異が生じていることになる。

いまのところ2月19日までの待機期間を過ぎてから一斉に下船を認める見通しだが、その前に乗客乗員の全員の検査ができないか、厚生労働省がようやく検討に入った。やはり感染の規模が大きすぎる。

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