武漢発の財新リポートが世界に注目される理由

FTからアルジャジーラまで頼るメディアの実像

財新の取材班は武漢の医療現場の密着取材を続けている(撮影:財新記者 丁剛)

「健全な社会に必要なのは様々な声だ」。

武漢で新型肺炎の治療の第一線に立ち続け、みずからも新型コロナウイルスに感染して2月7日に亡くなった李文亮医師は「財新」のインタビューで生前にそう語っていた。この一言で、李医師の名前は歴史に刻まれたといえるかもしれない。英フィナンシャルタイムズ、米ニューヨークタイムズ、米CNNなど世界の主要メディアがそろって「財新」の記事から李医師のコメントを引用し、中国政府の情報統制を批判する論陣を張ったからだ。

当局は告発者を処罰した

李氏は「デマを流した」として警察から処罰されていた。武漢市政府は12月初めの時点で患者の存在を把握していたが、情報公開は後手に回った。李医師のような現場の医師の声は当局や、その意を受けた病院幹部により封じ込められた。

武漢は1月23日に封鎖されてしまったため、海外メディアによる現地報道は期待できない。また、中国の官製メディアには、当局に都合が悪いニュースを期待することはできない。頼りは、いまでも武漢にとどまって取材を続けている独立色の強い中国人ジャーナリストだ。とくに医療現場での取材を徹底して続けている財新の記事は、欧米のメディアでもたびたび紹介されてきた。

新型肺炎 中国現地リポート「疫病都市」はこちら(画像をクリックすると週刊東洋経済プラス緊急リポートのページにジャンプします)

たとえば1月24日の米ブルームバーグは、「中国政府は22日時点で確認されている新型コロナウイルス感染者は571人としているが、中国メディアの『財新』によれば最終的な感染例は6000件を上回る可能性がある」と報じた。またカタールのアルジャジーラは2月2日付けで、武漢での救援物資分配の遅れについて、「定評ある中国メディア『財新』は、ほぼ2つのサッカー場の大きさである赤十字の倉庫はほぼ完全に医療用品で一杯だったが、ほんの少数の人々だけが流通のためにそれらを仕分けしていたと報告した」と引用している。こうした例は枚挙にいとまがない。

武漢の状況をつぶさに追って世界に発信している「財新」は、実は景気指数などの情報サービスも手がける独立系の経済メディアだ。だが、海外ではむしろ、中国で数少ない調査報道メディアとしての評価が高い。それはたぶんに、2009年に同社を創設した社長の胡 舒立(Hu Shuli)氏の強烈なキャラクターと関係している。

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