クルーズ船集団感染に見る新型肺炎追加リスク 日本国内でも都市型感染拡大の懸念は残る

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SARSの取材当時、中国国内を移動するのにやはり高速鉄道を利用した。車内では車掌がまわって切符の確認の代わりに乗客の体温を調べていた。感染リスクの高い場所であることは間違いない。

同様に航空機においても感染リスクは高まるはずだ。やはりSARSの取材当時には、航空機を使うこともあったが、消毒、除菌を徹底した機内では、むしろ消毒液、もしくはアルコールの臭いが漂って、かえって目にしみたり、息苦しさを覚えた記憶がある。

振り返ってみると、SARSの現地取材から滞在先のホテルに戻ると、まず、ホテルの入り口でアルコールによる手洗いを求められ、体温をチェックされた。熱がなければ、小さなシールを胸元に貼られる。それから自室に戻ったときには、屋外に持ち出したカメラやバッグを殺菌効果のあるウェットティッシュで拭っていた。

体内から吐き出され、付着したコロナウイルスは、長くて48時間は死滅しないとされる。帰宅後の手洗いだけではなく、持ち物の消毒も必要になる。

とくに満員電車内でも、多くの人が取り出して操作するスマートフォンは、対応が必要なはずだ。スマホをトイレに持ち込むだけでも、大腸菌が付着することは知られている。

そこへいくと、感染したコロナウイルスは排泄物といっしょに体外に放出される。つまり、大腸菌と同様に手やスマホに付着する。

トイレでの感染拡大にも注意が必要

SARSの取材で訪れた香港では、中国語と英語でトイレを流すときにはふたをした状態でするように指示するポスターが貼り出されていた。

2003年当時、香港では、中国語と英語でトイレを流すときにはふたをした状態でするように指示するポスター(筆者撮影)

排泄後の手洗いは無論のこと、飛び散りを防ぐためにはふたをしてからのトイレ洗浄は重要になってくる。

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SARSの教訓がそのまま噴出したようなダイヤモンド・プリンセスの感染事例。同様のアウトブレイクが、陸地でいつ起きてもおかしくはない。

マスク、手洗いが最大の予防策であることは言うまでもないが、それだけでは万全といえないところにまで、事態は進展している。過去の事例に学ぶのであれば、感染の危険はどこにあるのか、もっと個人ができることはあるはずだ。

青沼 陽一郎 作家・ジャーナリスト

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あおぬま よういちろう / Yoichiro Aonuma

1968年長野県生まれ。早稲田大学卒業。テレビ報道、番組制作の現場にかかわったのち、独立。犯罪事件、社会事象などをテーマにルポルタージュ作品を発表。著書に、『オウム裁判傍笑記』『池袋通り魔との往復書簡』『中国食品工場の秘密』『帰還せず――残留日本兵六〇年目の証言』(いずれも小学館文庫)、『食料植民地ニッポン』(小学館)、『フクシマ カタストロフ――原発汚染と除染の真実』(文藝春秋)などがある。

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